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「ゆうべ、急に目が覚めたとき。私、焦ってたの。部屋の中を見渡して、何かを探してた。アレは夢じゃない、現実にあったこと……。この数日間、ずっとそばにいた……そう、誰かが居なくなったような気がして。慌てて、外にも出て、ベランダも確認して」
数日間そばにいた、誰か?
彼女は「あっ」と声を上げ、急に膝の上で握り締めた鞄に手を突っ込んだ。彼女が取り出したのはA5サイズのノートだ。ピンク色の表紙のそれをパラパラと捲り、目的とするページを見て「やっぱり、そうだ!」と確信を得たように言った。
「幽霊の男の子の、ゴウくんだっ! その子が急にいなくなってて。私に一週間以上、憑いてたのに。突然消えちゃったから。ちゃんと成仏出来たのかなって、不安になって」
「え……」
ゴーストの男の子の、ゴウくん? 成仏……?
僕は呆然としながら彼女を見つめ、思案していた。ハタチの専門学生の花純さん。赤いバラの王子さま。一週間以上もの間憑いていた、ゴーストのゴウくんーーー。
それはとても、他人事とは思えない事象で。頑丈に鍵をかけられた金庫をこじ開けるような感覚だった。
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