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花純さんは黙り込んだ僕に気付き、焦って「ごめんなさい」と言い、目を赤くした。涙を浮かべた瞳から察するに、変な人だと思われた、と自身の発言に後悔しているようだった。慌ててノートも鞄に仕舞い込んでいる。
僕は俯きがちにフッと笑った。
あの天使め。全部忘れちゃうとか言ってたけど、ガードが緩すぎるよ。
「あの? 蓮くん?」
僕は涙目で狼狽する花純さんをジッと見つめ直した。僕の知っている彼女は、女神なんかじゃない。
「俺も。言いますね、変なこと」
「……あ、はい」
「花純さんは。ハタチの専門学生ですよね。漫画学科の、二年A組」
「えっ!!」
「お酒が好きで、大飯食らいで、恋愛のこととなったら情緒不安定になってやけ酒もやけ食いもしてしまう。おまけに、幽霊とはいえ、他人の男の子がいるのにその場で着替えようとするし、漫画のこととなったら食事にも頓着がない」
「っ!? れ、」
「夢見がちで、運命の赤い糸とか信じてて。漫画を描いているときはノリノリ、コマ割りは確か……、ミリぺんより、カラス口。でしたよね?」
「れ、蓮くん……??」
頬を赤らめながらも、彼女の額が徐々に青ざめていくのが見て取れた。僕の知っている花純さんは、変人だ。奇人変人。
「子供らしくなくて、当然です。だって俺は、高校生なんだから」
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