それからの日々

4/6

21人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
 A4サイズの紙束をペラペラとめくり、彼女が描いた漫画を読ませて貰う。彼女は僕がした臨死体験をネタに、天使までもが出てくる漫画を描いていた。 「この天使、相手役の男の子より美化されてない?」  率直に思ったことを質問すると、彼女は「うふふ」と笑い、「天使さまは特別なのよ?」と彼女の理論を展開させる。僕はあの夜に出会った、怠け気味の天使を思い出し、作り笑いをした。 「うん、いいと思う。面白いよ」  ネームからストーリーの内容を把握して答えると、花純さんは嬉しそうにニヘラッと笑った。  あ。この笑顔、久しぶり。 「本当? 良かったぁ。これで原稿に入れるわぁ」  僕は「うん」と言って笑いながら、かつて見たあの姿を思い出す。狂ったように目をギラつかせる彼女の姿を……。 「あっ、蓮くん」 「ん、うん?」  オレンジジュースのストローから口を離し、焦って彼女を見る。 「夏休みだし、暇だったら手伝いに来ていいよ?」 「手伝い?」 「消しゴムかけとか」  うーん、と考えてから僕は真面目に答える。 「と言っても、俺も課題とか塾で忙しいし」 「それじゃあ、私が漫画描いてるそばで課題やってもいいよ?」  花純さんは手を振り、幾らか動揺していた。  これは……。部屋に誘われている、と。そう思ってもいいのだろうか?
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加