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A4サイズの紙束をペラペラとめくり、彼女が描いた漫画を読ませて貰う。彼女は僕がした臨死体験をネタに、天使までもが出てくる漫画を描いていた。
「この天使、相手役の男の子より美化されてない?」
率直に思ったことを質問すると、彼女は「うふふ」と笑い、「天使さまは特別なのよ?」と彼女の理論を展開させる。僕はあの夜に出会った、怠け気味の天使を思い出し、作り笑いをした。
「うん、いいと思う。面白いよ」
ネームからストーリーの内容を把握して答えると、花純さんは嬉しそうにニヘラッと笑った。
あ。この笑顔、久しぶり。
「本当? 良かったぁ。これで原稿に入れるわぁ」
僕は「うん」と言って笑いながら、かつて見たあの姿を思い出す。狂ったように目をギラつかせる彼女の姿を……。
「あっ、蓮くん」
「ん、うん?」
オレンジジュースのストローから口を離し、焦って彼女を見る。
「夏休みだし、暇だったら手伝いに来ていいよ?」
「手伝い?」
「消しゴムかけとか」
うーん、と考えてから僕は真面目に答える。
「と言っても、俺も課題とか塾で忙しいし」
「それじゃあ、私が漫画描いてるそばで課題やってもいいよ?」
花純さんは手を振り、幾らか動揺していた。
これは……。部屋に誘われている、と。そう思ってもいいのだろうか?
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