ep2.生まれ変わりの条件

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◇課せられた義務 『天使の仕事って楽しいの?』  9万とんで5人目の魂に尋ねられ、僕は思わず首を捻った。  小一時間前、交通事故に遭った女子高生をリストに従って迎えに行き、たった今天界の入口へ着いたところだ。 『私みたいに死んだ人を迎えに行くのが仕事なんでしょ? そんなのダルくない?』 《別にダルくないよ》  僕は人間の姿から、丸い光の球へ変わる彼女を見つめ、《それに》と言葉をついだ。 《9万9千1の魂を送るのが俺の仕事だから》 『きゅ、9万9千、1??』  もはやまん丸の魂になった女子高生だが、僕の言い草に呆気にとられているのが分かった。 『随分と中途半端な数字だね?』  そう言って彼女は、クスクス笑う。 《神様が決めたことだ。中途半端でもなんでもやり遂げるよ》  言いながら僕は人差し指を立て、天界へ上がるホールを空ける。 《じゃあな、輪廻転生の道でヘマするなよ?》 『うん、ありがとう。天使さん』  宙空へと吸い込まれて消える魂を、僕は片手を上げて見送った。それまで手にしていた女子高生のリストからパッと指先を放すと、写真や死因等が書かれた紙は、青い炎に包まれ、たちまち空気に溶けて消えた。 《次は、9万とんで6人目だ》  上下揃いの白いスーツの懐に手を突っ込み、内ポケットから次のリストを取り出した。  ーー『天使の仕事って楽しいの?』  ふと先程の魂の言葉が耳に囁いた。僕はひとつ息を吐き、次の行き先へと方向を変える。バサッと二枚の羽を翻した。  今の天使業は、楽しいか楽しくないかでやっているわけではない。これは義務なんだ。僕が人間として生まれ変わるために、神様から課せられた義務。
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