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想いの糸というものは、人間同士が持つ強い絆で現れるもので、天使がわから言わせてもらうと、少々厄介なのだ。
そもそも死が決まった時点で人間の魂は霊体となり、天使はそのとき初めて迎えの魂と接触できる。
心臓が動いている限りは肉体も生きていると言えるのだが、だいたいの人間が、先に意識だけを切り離して霊体となる。が、万が一その状態で想いの糸が現れたら、天使はその糸が切れるまで待たなければいけない。
糸はまだ生きている人間と霊体とが、互いに強い想いを抱いていれば現れ、肉体にある心臓が止まるまでは絶対に切れない。
リストに死亡予定時刻が載っているものの、死者の気持ちが大きく左右すればそれが体の機能に影響し、心臓の鼓動時間は大幅に延びる。誰かを想う気持ちは、生きたいという意思になり、エネルギーとなる。
そして糸の存在がある限り、天使は霊体に接触できないので、送る時間に誤差が生じる。
誤差が数分程度ならどうってこともないが、数時間ずれ込むと次に送らなければいけない魂を拾えなくなり、成仏のできない浮遊霊を作ってしまう。
そんなことになれば始末書問題だ。そういった理由で、厄介というわけだ。
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