第一章 もふもふ三兄弟と黒竜の子 第一話 イキ神と魔物1

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第一章 もふもふ三兄弟と黒竜の子 第一話 イキ神と魔物1

聖ハレス教会。日曜ミサ。 壇上にいる男性の低い大きな声が場内に響いている。 長い話に飽きた子供たちはこそこそと話をし、体を動かし、大人に叱られている者もいる。大人たちはあくびをし、寝ている者もいる。 神はこの世界に降り立ち、何もない世界を作ろうとされた。“ 無 ”という種を植えられた。だがこの地は奇跡を生んだ。 “無”という種から植物が誕生したのだ。 神は何もない世界を作ったはず、神は種を刈った。刈り取ると灼熱の暑さ起こし、何もない世界を守ろうとした、だが刈り取ったところには、新しい芽が出てきた。 残った植物たちは“ 神の試練 ”をのりこえたのだった。長い年月は、ある物たちを作り上げた。小さな虫だった。 神はこの世界を休ませようとした。 訪れたのは極寒の氷の世界。 この世界に生きたものたちはすべて真っ白い世界で“ 無 ”にかえったと思った。 神は何もない世界にホッとした。 この世界に生きたものたちはすべて“ 無 ”にかえったと思った。だが、地が震え、大地を割いて、真っ赤な溶岩が流れ出た。 白い世界を溶かし始めると試練を耐え抜いた植物たちが目を覚ました。 神はあきらめ、その者たちと共存する道を選んだ。 数千、数万の時を過ごしたこの地に新たな生命が生まれた。 それはこの地に大昔、神の怒りを買い地上から日の当たらない地下深くへ埋められた者たちであった。 神の怒りを買った者たちは悪魔と呼ばれた。奴らは争いを好んだ。 面白おかしくただ生きていた物たちは、悪魔にそそのかされ、悪魔の心を持つようになる。 神は、争うことがむなしいことだと教えるが、聞く耳を持ったのは少しのものたちだった。 神は嘆き悲しんだ。 その涙は台地がなくなるまでこの世界を覆いつくしはじめた。 試練は二つに分かれた。悪という名の邪悪な心。善と言う愛の心。この二つは、表裏一体いつも体の中で、悩ませ、葛藤させていった。 善を強く持った者達は神に絶対の信仰を約束し、神の言うことを素直に聞き入れた。 悪を持つ者達は、それを指さし嘲笑った。   だんだんと無くなる大地、善の者達も悪に飲み込まれ始める。これではいけないとある男は神にその真意を問う。我々を殺すのかと?神はこの世界を無に戻したかっただけなのだという。 男は、信仰を捨てるつもりはない、我々はいつもあなたと一緒だという男に神のこころは動き、その男の家族にだけ、船を作る事を許した。 悪に負けることなく、神に信仰を注いだのちに、皆を安住の地へと送ろうと神は男と約束をした。 何年も船は水の世界を彷徨い、それでも男は神の教えを守り抜いた。 雨が止んだ。空に放した鳩がオリーブの枝を加えて来たのだ。 世界の一部が顔を出した。陸地は神の教えを守ったものだけが下りる事の出来た場所だった。 神は新たな種をそのものたちに託した。だがそれもつかの間、教えを守るものは邪悪な物にそそのかされ愚かな考えを持ったものに押され、信仰はすたれていってしまった。 この世界は汚れ、もう元には戻せなくなっていった。愚か者は悪となり、神が滅した争いを好む悪魔を呼び覚ました。 神は、怒り、その熱は熱波となりこの台地を覆いつくし、悪が二度と生まれないように、病でこの世界を封じた。だが、悪魔は、神に反発、この世界を自らで消した。 神はこの世界を見放してしまった。 混沌の世界は数千年続いた。 地下深くに残った試練の根が顔を出した。その根は根でしかなかった。ただその根は、何度も地上を目指した。 神はその根にたずねた、何ゆえ地上を目指すのかと。 根はただ花を咲かせたいと神へいいました。 神はもう二度と、この世界がむなしさで覆われるくらいならと、試練のいる地の奥深くへ一粒の種を落としました。 根は暗い地の中で太陽の日差しと水のありがたさに感謝する心を持つことを心にきざみます。 その間、神は、善の心で悪の心を抑えることに気が付くのをじっと待っていました。 長い、長いときがたち、神がまいた種を地上へと抱きかかえこの世界へと顔を出した根は、もう根ではなく、美しい花を見事に咲かせたのです。 「神は、正しい行いをするならばこの世界を見守ってあげましょうといわれました。 そして今、私たちがこの世界に生きているのは神の思し召しなのです」 この危機は、神がもたらしたものではありません。私たちが、感謝を忘れたからこそ、神が与えた試練なのです。ですから、乗り越えていかなければならないのです。種族で争っている場合ではありません。 「今生きていることに感謝しなさい、両親を大事に、お体を大事に、又来週元気でお会いいたしましょう」 さようなら。 皆、きをつけてな。 枢機卿様もお元気で。 さようなら。 さようなら。 「ちっ、又増えてる」と身なりのいい男の子が言いました。鼻は豚鼻、耳は両脇についています。体は人間です。はいている皮の靴をカツカツとイラつくように小刻みにならしています。 「そんなことを言うもんじゃない、おお、お元気でしたか?」と言って行ってしまったのは同じような顔をした人たぶん父親でしょうか? 「種族の枠を超えろって言っても、毛のない種族は嫌いなんだ」 着ている服からはみ出したところにはうっすらとピンク色の短い毛でおおわれています。 「お前だってたいしたねえじゃねえか」そう言ったのは、狐のような顔つき、耳は頭の上にあり、着ている物からは、毛がはみ出しています。お尻には立派な黄色い尻尾、その先が黒くピンと上を向いたのを手で撫でました。 「そんなことを言ったらだめだよー」 間に入った子は猫のように髭があり、耳は頭の上、長い尻尾がうねうね動いていますが、彼もボタンの間から毛がはみ出しています。 「なんだと!言ったら何だよ?」 「かってにやれ」 「豚のくせに」 なんだと! 「ゴホン!」 咳ばらいをした方の方を見る子供たち。 「ウワー枢機卿様、なんでもないです、さようなら!」 「「さようなら!」」と子供たちが教会から出て行きます。 「まったくあいつらは」咳ばらいをした方の後ろから顔を出されたお方たちは皆、黒いスモックを着ておられます。ただ彼らは、耳が顔の横にあり、しっぽはないようです。 「まあ、まあ、ジュールよ、どれほどおる?」 ジュールと呼ばれたお方は道を覗き込むように一歩出られました、外には貧しいものたちが空腹のため動けず座り込んでいます。 「ざっと、五十人ほどでしょうか?」 「なかなか減らぬな」 「ハイ、中も大変で」 「人間か?」 「いいえ、今のところおりません」 「そうか……ん?」 枢機卿様と呼ばれたおかたが空を見上げました。 「どうかなさいましたか?」枢機卿様の手は少年の肩に置かれています。その少年が上を向き尋ねました。 「大地の気が騒いでおる」 「大地の、気?ですか?」と皆が空を見上げた。 「ウム、なにであろうな?」 「魔物でしょうか?」 「そうかもな、ハンスはまだおるか?」 「ハイ、お待ちください」 まだ空を見上げている。枢機卿様?まだ何か?と少年は尋ねました。 「ピエールよ」 「はい」 「明日の朝は少し騒がしくなりそうだ」 「明日?ですか?」 枢機卿様は少年のほうに顔を下ろすとこういわれました。 「数日後同じときに二つの魂がここへ来る、それはお前にとって大事なものとなり、われらの大事なものとなろう」 「二つの魂?ですか?」 「ふぉ、ふぉ。ふぉ、楽しみじゃのー」 はあ。 「枢機卿様」 眼鏡をかけた老人がやってきました。長い尻尾を左右に揺らしながら来た人は人間のようですが、耳だけは頭の上にあります。 「おお、ハンスか、少し良いかの」 「数日後かぁ?」と少年は空を見上げました。 「ピエール」 「はい!」 少年の肩に手を置いたお方とハンスという老人が歩き出しました。
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