17人が本棚に入れています
本棚に追加
第12話 商店街 1
「ただいま」
「はー重い」
返ってきた父ちゃんとメルーは台所にどさりと大きな荷物を置きました。
なに?
「かつおが手に入った」
「じゃあ、たたき?」
「そうだな」
やったー!
「チーかつおだぞ!」
ワーと言って走って来た奴。
何かを早口で父ちゃんに言うけど、慌てないでゆっくりしゃべろって俺とメルーは突っ込んだ。
今日枝豆爺ちゃんが来た話をすると、爺ちゃんが魚を連れてやってきたと言い始めた。お爺さんに出会った日に魚屋で、チーはいろんな物を買ってきたんだったなと思いだした。
「そういや、燻製もその日だったな」
「燻製?また何か作るの?」
「今日は遅いからな、明日だな」
「たたきの準備だね」
「わらー!ニーニ、モーモーさん、モーモーさん」
「はいはい、そとでするぞ」
「おー!」
「はしゃぐな、また熱出すぞ、まったく」
「忙しいけど、いい事だね」
「ああ、母ちゃんは大丈夫か?」
「私は健康そのものだ」
そうか?
兄ちゃんや父ちゃんたちが外でカツオの準備を始めると、チーは台所で、枝豆の山の前で腕組みをしていた。
「おにぎりもいいなー」
「エーさやから出すのが面倒だよ、普通に食べるのがいい」
「チー、枝豆どうする?」
チーはニヤニヤしながら、保存と言ったんだ。
できるのか?
できゆ!と言いながら藁を抱え持って行った。
俺は、母ちゃんから聞いた話を思い出していた、さっきのお爺さんの話の続きだ。
最後に魚屋へ行く、チーは母ちゃんにこんなことを聞いた。
「カチカチに硬い魚?知らないねー」
残念、やっぱりないか。と言ったチーは変な事を言い始めたそうだ。
この国は海に囲まれているはずだから、海の魚も多いはず。燻製は作らないの?
「燻製?」
なんのことだと母ちゃんは保存できるものだというものを聞きました。
「保存、チサ、それは本当かい?」
目の色が変わった。ぎゅっと握られた肩に力が入ってるし。とチーは笑いながら話していたな。
お肉でもチーズでもゆで卵もおいしいよ。と話していて、確かにおいしいけど、出来立てはちょっと苦手だな。
「よし、それを父ちゃんに作ってもらおう、先に魚だ、行くよ」
あいあいさー。
叔母さんは、まず、その話を魚屋のおじさんに話しました。
「サー、いぶして、カチカチにした魚か―聞いたことねえな」
耳がぴくぴくせわしなく動いている。
「じゃあ海藻はあるかい?」
「ああ、こっちにある」
うわー、これ、このおっきいの。叩きます。
バイ~ン、バイ~ンていい音です。
「昆布の食い方知ってるのかい」
私じゃないよと顔の前で手を振るマーマは下を見た。
昆布!うん、うんとうなずいている。
「この子は?」
「えーとあのー」
ん?
「ちんちぇきでちゅ、よろしく」
「親戚の子だよ、預かることになったんだ」
そうか、というニャーゴはしゃがみ込んでチビよろしくなと頭を撫でる。
「昆布か珍しいな」
家にあったものは食べつくしたから買いに来たというと不思議そうな顔をした。
わかめー、これもほしい、これもー。
「おい、おい、こんなもん、食べるのか?」
カチカチに乾いたカラフルな海藻がいっぱいです。
水で戻せばサラダでもいいしスープの具にもなるよ、ママさん、買って、買って。
「うそだろ?」
「あんた売ってるのに知らなかったのかい?」
たまにかっていく人がいるけど、食い方なんか聞かなかったというのだ、おい、おい、大丈夫かよ。
そしてメイン、今ある魚をすべて並べてもらった。
「こえとこえ」
「カツオにアジ、これをいぶすのか?」
塩水につけて、そのあと乾燥させる、そこまでは、干し魚だが、いぶすことで、風味が変わり、腐るのを止めることができる、後はカチカチに乾燥させれば何年でも保存できる。
「保存、そりゃマジか?」
まあ、家で作るから、そこまでは保存できなくても二、三ヶ月は持つだろう。
「なあ坊主、それ出来たら味みさせてくんねえか?」
すぐは無理だよ?
「乾燥させるんだもんな」
アジはすぐできるかもしれないけど、カツオはなー?
「よーし、魚はもってけ」
ラッキー。
どっさりとおいた魚。いいのかなー。
「あんた、なにしてんだい?」
魚屋の奥さんです。かくかくしかじかと説明中。母ちゃんはただでいいと言われていたので奥さんににらまればつが悪かっと言っていたよ。
チーは母ちゃんを引っ張りました。
生で食べる?
「生だって?ダメだよ、お腹壊しちまう」
じゃあ火を入れるけど、温めるぐらいならどう?
どういうことだい?
叔父さんと叔母さんがチーを見ます。
お醤油はありますか?
あるよ。
ミカンジュースはありますか?
「ミカン?」
母ちゃんは、柑橘系のジュースがあるかと聞いた。
ああ、それならあるよ。
叔父さんに、カツオをさばいてほしいと頼みました、皮はついていてもいいです。ただ硬い部分はそぎ落としてください。
三枚におろしました、おいしそうです。
それをまた切ってもらい、半身分、お腹の骨、内臓もきれいにとって、刺身でもいけそうだなと思いながら、フライパンはあるか聞きました。
どうすんだ?
魚を焼きます、皮目から。
「焼くのか?」
うん、うん。
叔母さんが持ってきたものを味見します。
それを混ぜました。
「うわー、混ぜたらだめー」
「ん」とできたのを差し出しました。
なに?
味見です、指を入れなめました、おいしいよ、どうぞです。
味を見るおばさん二人のしっぽがピン!
「うまい」
「酸っぱいけど、うまいよ、これ」
玉ねぎはありますか?あったらスライスしてください。
わかったよ。
「マーマ、あれ」
あれ?
お爺さんからもらったの。ガーリックを一つ欲しいとカゴから出しました。
猫叔母さんはそれもスライスしてくれました。
伯父さん、ひっくり返して。
オウ!
油がじわーっと出て皮目がパリッ。いい塩梅です。
お店の前には人だかりができてきました。
ころころかえして、少し焼き目が付いたら、水で冷やします。氷水はNGです、水でいいのです。
切ってください、これくらい。
「オウ、へー、こりゃきれいなもんだ」
お刺身です、いいですねー。
叔母さんが野菜を切ってきました。
切ったぞというおじさん
お皿に並べてください。
皿に並べるのか?
お塩ある?
ああ、あるよ。
私はその切って並べた魚に、塩を振ります。
「すごいね、塩の振り方まで知ってるのかい」
味をなじませるために、叩いてくれといった。
「こうでいいのか」
ぺシぺシ叩く叔父さん。
その手がぷにゅぷにゅしていて、長いしっぽがうねうね動くから触りたくてうずうずしたというチーだ。
「ありゃ、中は生、でもあったかいから火は通っているのか」あったかいと言っています。
そしたら野菜を乗せて、この汁を、手でかけながら、また叩いてください。
「こうか?」
上手ですと手を叩きました。
「なんていう料理だい?」
「かちゅおのたたきでちゅ」
「カツオのたたき、へー」
切っているのをみました、いた、アニサキス、熱で身を縮めています。
これ、ぺっ!
「おお、よく知ってるな、これはぺっだ」よく見て、魔物を取り除きますが大したいないです。
味見してもいい?と聴いたらいいぞというので、口に入れました、んーうまいです。
ネコさんの口の側にもっていくと、大きな口をアーン。目がカット開き、グーです。
奥さんも口に入れました。
「お、おいしい、これおいしいよ!」
「食ってみろ!」
ママさんも恐る恐る口に入れました。
「なにこれ?おいしい」
すると奥さん連中の手が伸びてきました。
「ニャーゴ、それおくれ」
「ミリヤ、そのできたのをくれないか?」
「その魚おくれ」
すごいことになりました。
「こりゃ売り切れちまう、パルート、もって帰っておくれ」
「でも」
「いいってことよ、坊主、楽しみにしてるぞ」
「あいあいさー!バイバイ!」
最初のコメントを投稿しよう!