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うまそう! メルーの声。 父ちゃんがカツオを一気に焼いていく。 こんな食べ方知らなかったしな。 チーは生のニンニクもそろそろ終わりと言って、スライスしたものを干していた。 パリパリに干したにんにくは瓶に入れて保存。 でも今はまだ生がある。 「ニーニ、スライサー、取って―」 はい、はい、高い所につるしてあるのを渡した。これ、チーが作ってくれと頼んだもの、これ簡単でいいよな、大量に作るものは楽ちんだ。 今晩のレシピ。 カツオのたたき。 ジャガイモのみそスープ。 枝豆とひじきの混ぜご飯。 そして。 パキン! 「んーうめー」 「これうめーな」 「ソーセージでもいろんな種類があるんだなー」 「もっと喰いたい」 「食い過ぎ、これでちょうどいいんだよ」 「ごはんおかわり」 「この黒いのと緑がなんともいいねー」 「俺たちがむいたんだぞ」「たいへんだったんだからな」 「ちょうだ。ちょうだ!」 それに大人達は大笑いです。 にぎやかな夕食でした。 「なあ、これを保存するってどうするんだ?」 枝豆です。 「こおりゃせる」 は? 「だからー、こおりゃせるの!」 何を言っているのかわからなかった、周りの大人も何だと言わんばかりにみんなの目が集まった。 「チー、ゆっくり話してくれないか?こおりゃせるって何?」とアンジュ。 「えーと」そう言うと椅子をおり、アンジュを引っ張った。 何処に行くんだ? 俺たちはその後追った。 冷蔵庫の前に立つと、開けてこれと言った。 「これ?氷?」 「うん、こおりゃせるの!おにくもね、こおりゃせる!」 「おい、ちょっと通せ」と父ちゃんがなかへ行きます。 「チサ、どういう事だ?氷は作れないぞ?」 「んー、おしょと、さむいからできりゅよ」 「外?」 「うん、おみじゅ、外、氷!」 確かにできるが?どういうことだ?とみんながざわめきます。 父ちゃんは、熱が出たばかりだから明日にしようと言っています、チーは上を見上げると、うんと言って、その話は終わったのでした。 夜、大人達は枝豆をつまみに、お酒を飲みながら明日、近所の人たちと近くの森へ行く話をしています。 それと保存食の事です。 「肉類は、細かくするより塊のまま調理したほうがいいそうです、干すにしても冬場の乾燥した空気で一気に干した方がいいそうです」 「乾燥に氷、あの子の知識は計り知れないな」 「それに温度もだよ」 「ああ、あれも驚いたな」 燻製を作るのにあつすぎるとだめと言って、温度という言葉を使いました、チーはお湯を沸かしてメモリの付いた鍋に入れたのです。 そして水をたすとこれが六十度だと言ったのです。 父ちゃんはそれをさわって火の調節をしたんだ。お湯がブクブクとわくのは百度だと教えてもらったんだ。 「燻煙器はできたのか?」 「それは任せろ、ソーセージは試しだ」 「今日のもうまかったけど、最初に食べたのは驚いたな?」 「ああゆで卵にチーズ」 「サーモンの白子、あれは最高だったな」 「長老、燻製も教えるんですか?」 「うちだけの秘密とは言えんじゃろ、あの香は抑えられないからな」 「ああ、さくら、あんなのにつかえるんだもんな」 他の木は? チサは知らないそうだ、でもできるかもしれないな。 そうか。 「ア~春が楽しみだ」 「その前に長い冬が来るけどな」 「でも今年は喰うのが多いぞ」 「それを教えてくれたのはチーだ、まだまだあの子が知っているのがあるかもな」 「あまり使わないでくれ、また熱を出す」 「だな」 食堂から笑い声が聞こえています。 チーは、隣の部屋に入っていきました。 俺は、それをこっそり聞いていたのです。 「チー、今日はやめておかないか?」 「頭から無くならないうちにしたい」 「そうか、わかった、じゃあ今日は早めに終わろうな」 「ごめんねおお兄ちゃん」 「さて、昨日の続きだな」 「昨日何処までだったかなー?」 「動物の国、今日はその種類」 「ああそうか、えーとね、おお兄ちゃんたちは犬、狼」 「犬、狼」 「お魚屋さんは猫」 「魚屋は猫」 「キリカさんはビーバー」 「ビーバーって?」 「川辺に住む動物で、歯で木を切ってダムをつくるんだ」 「ダム?」 「水をせき止める施設だよ」 「川の水をか?」 「うん、でね」 何の話をしているんだ?住んでいる人や働いている人を何か変な言葉で言っている。 ヒョウ、ライオン、ゾウ?ケンタウルス? 「司祭様はヒヒ」 「ヒヒ?」 「猿」 「さるねー?」 「ちゅぎ」 「いいぞ」 「枢機卿様は天使」 「てんし?」 「背中の羽が真っ白」 「え?ちょっと待て、枢機卿様に羽なんかないぞ」 「ありゅもん!でね、ピエールはね」 「ちょっと待て、天使は神様の使いだ、違うんじゃないのか?」 ムーっと口を突き出したチーは、天使でいいじゃんといったんだ。 「違うんだろ?」 「…… うん」 「なんだろうな?」 「んーと、体はライオン、羽はでっかい鳥だと思う、でね、顔が二つあるの」 「え?」 「たぶん実験で……」 「実験?」 「終わり、ちゅぎ!ピエール!」 「はい、はい、ピエールだねピエールって?」 「教会の子、あの子はね」 ピエールって人間の子だよな? 「ペガサス」 「ペガサスって?」 「羽のはえた馬だよ?」 「人間だろ?」 「ちがうよ、あたいとおんあじ」 おなじ? 「転生者、だけど記憶がない」 え?どういうことだ? 「そうか、ピエールもどこかの世界から来たけど、チーみたいに記憶がないというんだな?」 「うん、たぶんね、この世界に人間はいないと思う」 「何でだ?」 教会で聞いたお説教、今たっているこの世界は一度ほろんだ世界、人間は生きていけない世界になったとチーは言ったんだ。 カタン。 「誰?」 まずい! 「そこにいるのはジャルか?」 「ニーニ?」 俺はドアを開けた。 「聞いていたのか?」 「ごめん」 「チーどうする?」 「別にいい、ニーニ、聞いて、私はね、一度死んだ、頭の中に、いろんな事が詰まっていて、取りださないと忘れそうなの、おお兄ちゃんに頼んで、それを取り出してるんだ」 兄、アンジュはペンを持って何かを書いている、それは今話していた物をだ。 「私は、野間千沙子」 とアンジュが書いた物の最初の方を見せてくれた、線を引いた知らない、見たことのない文字。そのそばにチーが書いたと思う文字の様な物が書かれている。 この星、地球と言う星の日本と言う国で生まれ死んだ。そして生まれ変わった、竜の子供となって。そしてこの世界は、私が死んでから何千、何万年とたった世界、だから私が知っている物が遺跡となって残っていた。 「ニーニ?」 「なんだよ」 「ニーニも知りたい?」 「何をだよ」 「わたちのかこ、わたちね、まえはおんなだったの(私の過去、私ね、前は女だったの)」 え? 頭の中にある記憶というものでは、チーは前世、女だったんだそうだ。 「にゃい、にゃいできなくなっちゃう(内緒にはできなくなっちゃう)」と小さな声が聞こえた。 「だな、ジャル、話してもいいが、チーの話は、この世界を狂わせるかもしれない大変な事なんだ、だから内緒だったんだ」 狂わせる?そんなに大変な事なのか? 「そうかもにゃー」 「まあ、そういう事だ、母ちゃんに話したらぶっ倒れるかもな」 「そうなのか?」 「ね、だからしー」 人差し指を口に当てシーッと言ったチー、俺は頷くしかなかった。 今日はここまでとアンジュが言う、俺たちはトイレに言ってベッドに戻った。 チーは俺に抱き着いてきた。 「もう」 「へへへ、モフモフ、ニーニ大好き」 まあ悪い気はしなかった。 「寝るぞ」 「うん、おやすみ」 「おやすみ」 チーの横顔。プニプニとしたほっぺたはまだ赤ん坊みたいだ。 アンジュの机にはいっぱい書いた物が置かれていた、後で見せてもらおう、チーの過去か、過去ってなんだ? 生まれる前の記憶? まあいいか、わからないのは教えてもらおう、ねむ、フワー、お休み。
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