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 ※※※ バン! バン!バン!バン! バン! テーブルを叩く音が部屋を埋め尽くす。 「くそー!まだ見つからないのか!?」 ここは、ジャルたちの住んでいる領地からずっと東、この国の東に位置するバーシア領。 「あれから一か月、もう、死んでいるかもしれない」と長い髪を指に巻き付けながらいう男は狐顔。 「それならそうでいいんじゃないか?」そういいながら酒をある体格のいい顎髭の男はライオン顔。 「はあ?お前らナー!」 大きな机の上に両手を乗せそういったのはイタチ顔。 パン、パンと手をたたく音がした方を見ると金ぴかのローブをまとったお面の男。 「もう良いではないか」 「これは、これは、枢機卿様」 「おー、おつかれ」 「あなたまで……はあ」 〈こいつらはアルリア教の、何でこんな所に?〉 「そうため息をつくな」 廊下から中の様子をうかがっていた。 バーシア領主が亡くなった、跡継ぎがいたにもかかわらず、次に立ったのは、王の義弟という男。そいつは王族と何の関係もない。 領主に嫁いだ女の兄弟の子で、ここにいるこいつら、アルリア教にいいように使われている。 領主になるには、この国にある五つの領主たち全員が手を挙げなければ次の領主になれない。 手をあげているのは一つだけで彼はまだ認められていない。ただその手を挙げたのが癖ものだ。今の王妃の父親になる。 「それで?」と椅子に腰かけた金ぴか男が聞く。 「くそっ、アイバーンに襲わせた村は何もなかったように静かだと聞くし。ドラゴンが死んだというのに、カヌールのあの落ち着いた態度は何なんだ!頭に来る!」 「まあ、落ち着けよ、カヌールを殺すのは難しいんだろ?だから外から攻めているんだろ?」髪を触り長椅子からその男を見る。 「策はあんだよな、こういう時のために」酒を飲みほした入れ物をかんと置いた。 「策とは?」 「今はまだ、ですが王を倒すのには身内を動かせばいいのですから」 「あー、王子」 「しっ、誰かに聞かれると」 ああすまぬと声をひそめました。 ひそひそと聞こえる声は、聞き取れません。 ここまでか? 私はある機関から密命を受け潜入調査をしている。4つの領主たちは、跡継ぎである息子を探し出すこと、それと税収を上げることを言ってきた。義弟は小さな村を任されていたがその税金が少なすぎるため、何かあると睨んだようだ。 それを見張るように言われている。 耳に入って来た単語は、前の領主家族を殺した、いや殺せと命令したのはここにいるアルリア教の上を牛耳っている五教主と呼ばれる五人、そのうち四人がここにいる。ただ何を持って殺したのか、それを探っている。 笑い声が起きた。聞き取れなかった。 人が来た。 高速のノックがする。 「なんだ」 「失礼いたします、王様がお呼びです」 「わかった、すぐに参る」 男が出ていくと、もう王様になった気になったのかと揶揄する声。 それでも使える、この国はわれらの物。 「ひとつ言っておくぞ、足元すくわれるからな、慎重に」と言いかけたイタチに金ぴか男が返す。 「われらには大いなる神のかごがついています、臆病になる必要はないのですよイブロ」 「慎重になれと言っているだけだ、行ってくる」 「大丈夫かね?」 「あいつなら平気だろ?」 「あなた方も見習ってくださいよ、ユダ、あなた一番稼ぎが少ないのに、飲みすぎですよ」 「あー、はい、はい、それじゃあ行ってくる」 「頼みましたよ」 手を挙げて出て行った。 「さてと、私も行ってきます」 「ええ、頼みます、あー、その辺で聞き耳を立てているのがいますよ?」 「はあ?もっと早くいえ!」 「だって、イブロについていったシー」と口を突き出した。 「まったく、いいんだな?」 「ええ、カヌールと目障りなアイツは早々に排除してください」 「ほんと、おまえ、こえーよ」 そういって出て行った。 すると男は笑い始め、この世界はわれらのものといったのだ。 ぶつくさ言いながら別の部屋に来たイタチは扉の前で襟を引っ張り、ドアの前に立つ男にうなずいて見せると、ドアをたたいた。 「王様、教主様がお越しです」 「オー、イブロ殿待って負ったぞ」 「王様、大事なお話が、人払いを」 「ああ、皆下がれ」 〈チッ!〉 この部屋の音は聞き取りにくい、ここまでだな。 キャーという悲鳴、周りでは、誰かが聞き耳を立てていると、私兵たちがそばにいる者たちの首根っこをつかみ尋問し始めた。 足早にそこから遠のいた。 ※※※ 後でチーから聞くのだが、長老は王家の血筋。日本で言う本家。今の王様は分家の物になるらしい。なにそれと聞くと王様よりもえらいらしいがよくわからない。 この国一番の領地を誇り、昔王都がここにあったのは聞いている。 争いを好まない王様だった故に、王族を退き静かに暮らしたという。この領地には、いろんな重要機関の名残があり、人も多い。そしてその一つ、宗教。 ゲネスという全知全能の神を置く、ハレス教会があるため他の宗教が入ってくることができないようにした。 それは、昔、この地に来た聖職者が、民を守ったことから、この宗教だけが許され存在する。 だがどうも王都には、おれたちが知らない教団が入り込んだらしい。それがこの後絡んでくるのでいったんおいておく。 とにかく、長老は、領主たちの中で一番力を持っているために、ちょっとやそっとでは揺らがないのだ。 深夜、数羽の鳥が、飛び立った。 新しい物語の幕を開けるために。
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