第14話 甘酒 1

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第14話 甘酒 1

夜、大人たちの時間。 はいどうぞ、あんまり飲みすぎないでくださいね。 すまないな。 今日のつまみは銀杏を焼いたもの、それと鱒の燻製、鮭の皮だけを焼いたものパリパリでおいしんだよね。そしてこれ。 「パリパリが止まらん」 「ガブさん、キャベットまだあるかい?」親父はまだあると、立ち上がった。 ちぎったキャベットに、塩昆布をまぶしただけの物、少しだけ”だし”を入れて大きなカメに山ほど作ったのに、たった一日でなくなっちゃったよ。 「野菜ですか?」 「これを見てくれ、たどたどしいが、ちゃんとわかる」 そこに書いたのは白菜と大根。レタスにほうれん草。知らない名前だが絵でわかる。 「これは今、収穫しますよね」 「空いているところにもう一度種をまけば、ギリギリ収穫できるそうだ」 本当かよという声。 キャベットは?と、親父は出しながら聞いたら、これは春だそうだ。季節があるんですね?そうらしい。 目印に長い棒を指しておけば、雪が降っても掘り起こせるそうだ。それと、壊れて使わなくなった桶や入れ物に土を入れ、窓辺に置けば野菜ができるそうだ。 「おー、花を生けるようにか、そうだよな、それならできるな」 「今年の冬は飢えで死ぬものが減るかもしれないな」 「後は雪ですね」 「それなんだが、チサがこんなことを話していたんです」 それはこの季節、家にこもってばかりいても仕方がないという彼の提案。 「ハハハ、キリカ」 「はっ」 「材木や竹はあるか?」 「ありますが、薪ではないものでよいのでしょうか?」 加工できるので頼めないか? 「何を作るんだ?」 ああこんなのだそうだ。それは、メルー兄ちゃんに書いてもらった絵。 「雪の上を歩くだと?」 ああ、埋もれないらしい。 こっちは細長いな。 子供たちが遊ぶものらしいぞ。 そり、とは違うな。 「そうだな少し調達しておこうか」 頼むな。 できたらやり方教えてくれ。 「今年の冬は、ゆっくりしていられないかものー」 「でもそんなことで人は動きますか?」 「動くようにしたらどうかな?」 「どういうことだ?」 「長老、司祭様はいつこられますか?」 明日の予定だ。ではその時に相談なさってみては? ボブは、長老に、指で丸を作って見せたんです。 「おー、そうか、さすがじゃな、司祭様に相談してみよう」 大人たちは、冬の支度にわくわくし始めたみたいだな。 その頃俺たちは疲れて早く寝てしまい、今日はアンジュの所にはいかないと思っていた。 目が覚めて起きるとチーの姿が無い。 寒いな。 トイレに行くと大人たちの笑い声が聞こえる。 いいな大人は。 すると台所からこそこそ話す声。 「うま」 「しー」 「声が大きいんだよ、チーは少しな」 その声に台所の戸に手をかけ開けました。 なにしてんだ? そこにはしゃがみ込んで、アイジュ、メルーそしてチーが何かを飲んでいる。 「ニーニものむ?」 なんだ? 「うまいぞ」 「お酒みたいだぞ」 お酒? 鍋の中は白い色をしているけどお酒のにおい、なかにジンジャーを入れたのか、ほのかに匂いがしている。 カップに入れたもの、あついからフーフーして口に入れた。 あまーい。 「うま!なにこれ!」 「しー」 チーが作った甘酒だそうだ。 お酒なの? お酒と言うのはこれを発酵させればお酒になるらしい、でもお酒じゃないんだって言っておいしそうに飲んでる。 「はー、体が温まる―」 「大人達が来ないうちに行くぞ」 「早く飲んじまえ」 俺たちが台所から出ると、メイドたちがおかわりと言って入って行った。セーフ。 おいしかったな。 またちゅくるよ、寝よ、寝よ。 ベッドに入った。体がホカホカしている。 「今日はたくさんする事があったからさすがに疲れただろ?」 チーは指を折りながら、八百屋さんにお肉屋さんにお魚屋さん明日来るかな? 俺は来るさと言った。 今日は楽しかったね。と俺にくっつくチ―。 「だな、明日はもっと忙しいぞ」 「カボチャ、もっともらってくればよかったね」 「なんでだ?」 明日は教会の人も来る、もって帰ってもらえたのにと言っている。 まあ、明日は楽しみもあるから今度でいいだろう? そうだね、おやすみ。 おやすみ。 俺は、森から帰ってきてからの事を思い出していた、今日は本当にいろいろありすぎた。
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