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第15話 飲めない水 1
八百屋に近づいていきます。
なんだか、店先がにぎわっています。
「こんにちわ」
するとチーを見たおじさんが駆け寄ってきて抱き上げました。
「チー、ほんと助かったぜ、見てくれ、もうすごい人で、おっちゃん泣けて」
よしよし。
何に感動しているかというと、石焼き芋と焼き栗を店先で販売しているのです。
黒い石を集めて、火で熱して、その中にほおり込んでじっくり焼けばいい。これ目茶苦茶うまいんだー。
教えたのは、チーだし、今年大量にできたイモの種類までは知らなくて赤いイモと言っていたんだけどな。サツマイモってチーは言っていた。
蒸かして食べるのがあたり前でこんな風にしたことがない、まあ栗もだけどな。ジャガイモも並んでる、まあいいか。
この先、食料は減っていく、イモ類や玉ねぎぐらいしかなくなるというおじさんに、山の恵みを教えてあげたんだ。
それくらい食べ物が今年はないはずだったんだけどな。
それに香味野菜も少ないんだけど、乾燥させて使うのを知らなくてさ、これもチーが教えたみたいで、いっぱい草がぶら下がってる。
オレガノ、タイム等々。
ちょろちょろと流れ出る水の下には、この間とってきて束にした、クレソンと三つ葉を売っています。あったかいところで増やしたんだって。すごいねー、おじさん泣いてるよ、ハハハ。
「なに店先で泣いてんだよ、チサいらっしゃい、ジャル、今日はなんだい?」
叔母さんです。
「これをお願いします」
「こりゃまた大量だね、なにするんだい?」
「保存食」というチー。
「へー、野菜の保存か、興味あるね」
「おいで」
「そうだね、配達の時覗こうかね」
高い所から店の中を覗きました。
「ン?おっちゃんあれ」
ん?なんだ?
おろしてもらって店の奥へ入っていきます。
かぼちゃだ。
「あーそれな、くえねえんだ」
俺も覗き込んだ、可愛い、小さなもので、形もいろいろです。食べれないの?
まずくて食べれないという。
「おや、ジャル、ちびも来とったか」
お爺さんです。
こんにちわ。
杖で転がします。
「まったく、こんなもんに引っかかって」
「だって、食えると思ったんだ」
そうだ。といったチーです。
「おっちゃん、ナイフ」
「ナイフ?あぶねえだろう」
「ニーニ」
「ジャルか、それならいいが」
チーどうするんだよ。
切って?
切る?
何かないかな?
釘発見したようだ。
「じいちゃ、いい?」
いいぞというので一つ手に取り、そこに絵をかきはじめたチー。
変なの?でかい口、目は△「いいのかよ?」
あれ?知らないの?
何をだよ?
「まあいい、くりぬけ」
「へいへい」
ここじゃ暗いので店先に行き座り込んで、チーの書いたようにくりぬき始めまた。
そこへ娘、マムがやってきた。
「ジャル、なに?」
「わかんねえ」
「変な顔ー?」
俺は自分の顔の横にできたのを上げると
「ハハハ、へ―ン!」
お腹を抱え笑ってくれました。
道行く人が覗いていきます。
「じいちゃ」
なんじゃ?
悪魔とか、悪魔祓いとかというお話はないの?
なにそれ?
「…おー、お前は本当に賢いな」
だって教会があるんだよ、ハロウィンはないの?
はろぃん?なんだそりゃと言いながらお爺さんは店先にある椅子に座り、空を見ながら話しはじめました。
冬は悪魔が連れてくる。
食べるものもなくなれば、寒くて凍え死ぬ人もいる。それを悪魔の使いだといい。その日は、みんな教会へ行く。
よっしゃ!
できた?
「これでいいのか?」
うん。
変な顔だな?
笑ってるの?
怒ってるんじゃないのか?
うん、うん、見る人で違っていいのだという。
「これ、魔よけ」
はは・は?と変な声を出した叔父さん。
「息子よ、そういうことだ」
え?
「だからじゃ、これを作って売れと言ってるのじゃ」
「チーどういうこと?」
寒い冬、家の中で暗く沈んでいるより、笑って、悪魔を外に追いやる、悪魔を家の中に入れないようにする。
玄関や入口にこれを置けば、家の中の人が笑っているから悪魔は寄り付かない。
「ハハハ!」とおじいちゃん高笑い。
「親父、いいのか?教会に目つけられないか?」
「お前は、そんなだから騙されるんじゃ」
ぼかすか殴られています。
「へー、メグ、それ一つもらえるかい?」と言った叔母さんがいた。
「え?食えないよ?」
「飾りもんだろ、いいじゃないか、魔よけ」
「口にろうそくを入れるといいよ」
「ハハハ、夜、やってみるよ」
「じゃあ、鉄2枚でいいよ」
「うれた」といって朴けてるおじさん。叔母さんが叔父さんの背中をバンと叩いた。
「サーて忙しくなるの、ちび、顔はどんなのでもいいんだな」
「いい、口はこーんなに大きくして」と両手で引っ張った。目ものおっきく三角にすれば切りやすいよ。
「ハハハ、大きくな、ばあさん、ばあさん!」
頭に手が乗った。
おばさん。
「ありがとうよ」
首を振った。
叔父さんから焼き芋をもらった、カボチャももらってきたよ。
でね。
パンとチーの前で手を叩き拝むリリルさん。
帰り際、俺達をつかんで、人気のない方に連れていった叔父さん。
何だろうと思ったら、家族には内緒なんだって、何?と聞いたら、水のようなものを持ってきた。
「うまいものが出来るって聞いたんだが、まずいし、使い方が分からねー、チサ、助けてくれ」
叔父さんまたやらかしました、でもなんだろう?
聞くと、嘘っと大きな声を出したチー、何か知ってるな?
「まったく、捨てるような水、わざわざ買うか?」子供でも分かります。うん、うんいうチーです。
「だってー」
「買う!」
「チー、お前また」
「それ、絶対買う、どうしようお金ない」
叔父さんは、ためしに一本持って行ってくれというのです。
「わかった、あじゅかる、それじゃあ」
にひひ、これ、なんだと思う?
知るかよ。
この世界で手にはいるとは、あー、後は美味しい水があれば完璧というのだ。
「ニーニ、おいしい水はどこにある?」
「そうだなー教会の脇の水だな、あそこの水は汲んできて飲みたいぐらいだ」
へー、ニーニの味覚は確かなので相当おいしいねといった。
「ニーニ、ハルさんの所に行く」
もう、帰るんだけどー。
ちょっとだけ~。
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