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第16話 冬のたくわえ 1
朝から、氷の話で大人達は大変なことになっていた。凍ったものは水だけじゃない、それに興奮している大人たち。でもそれだけじゃなくて、保存にはいろんなものが必要になる。俺たちはその準備だ。
ガラスのビンは高価だけど、必要だし、チーが言いだした、ビンの蓋が金属ならなおいいというと、それをガラス屋に話したら、あっという間に蓋付きのビンが出来た。
すごいよな。
それとチーは缶詰が出来たらいいなって、それは内緒なんだってさ。
まあいい、そんなわけで、俺とメルーは長老の側で、チーとの食べられる山の恵みをまとめていた。
その日、にぎやかな門を潜り抜けてやってきた教会関係者御一行。
司祭様だけかと思ったら、なんと司教様、枢機卿様までいらっしゃったのです。
「枢機卿様見えますか?」
「ああ、ハハハ、カボチャか」どうもにおいでわかるようですが小さなものを渡しています。
「魔除けって書いてありますね」
「ハハハ、考えたな」と触って笑っておいでです。
「これは、これは、よくお越しくださいました」と長老がお出迎えです。
今日は料理をする者たちもつれてきました、よろしくお願いします。
「どうぞ、こちらです」
「枢機卿様、畑にタネをまいていますよ?」
「今時分、なにを撒いているのだ?」
白菜と大根、それとホウレンソウだそうです、ぎりぎりで、雪が降っても掘り起こせるそうです。
ほー。
ン?向こうは桶に土を入れています。
桶じゃと?
「これはどうするんですか?」
「葉物野菜やニンジンを植えているんだよ」
「窓辺は暖かいですからね、床に置かなければ何かできます、今から楽しみです」
へー。
ほー。
「これは?枢機卿様、皿から野菜が、ヒョロヒョロの草が出てます」
「ハハハ、これもやちゃい」
チーです、いらっしゃいませとちゃんと挨拶をしました。
「これも野菜ですか?この隣の白いのはなんですか?」
「これはもやしです、同じ種でできたものなんです」
「同じ?おかしいよ」
「これ、お日様にあてると緑色になってね、暗い所で育てると、こんな変なのになるんだ、たった一日でこんな風になるんだよ」と種が少しだけ伸びたものを見せています。
へー!
ほお!すごいな。
食べられるのは三日後です。と三日たったものを見せました。
「なんと、これはすごい」
「これがこうなるの?」
すごい!
「そんなにすごいのか?ピエール早う触らせてくれないか?」
枢機卿様は触って、フムフムと言っています、他の人も興味津々です。
「わー、すごい、オレンジの壁だ」
「あれは?」
「柿です」
「うえー、渋いのに」
「ハハハ、皮をむいて干すんだよ、お酒にちょっとだけつけて、おひさまをいっぱい浴びると甘くなるんだ」
へー。
本当かな?
食べてみる?
いいの?
みなさんもどうぞ。
水分が抜け小さくなっている、パクリと口にした、ねっとりとした触感にジュワ―ッと広がる甘さ。甘―いと感激していたよ。
「長老」と呼ぶ枢機卿様。
【はい、これもあの子です】耳もとでそっと話。
そうか……。
「こっちは真っ白だ!」
「細長いものがいっぱい、すごいね」
「大根だ、干してから塩漬けや酢漬けにすると、いつもの倍以上持つ」
へー。こっちも白い、なにこれ?
ユウガオの実です、夏にとれたものダメかなと思ったけど、何とかいけたのだ。かんぴょうです。やっぱりとれたての夏の方がいいというと今度はそうしようって言ってもらえた。
「こっちの切ってあるのはからからに乾いてるよ」
「ああそれは水で戻せばふやける、それを味のついたもので煮ればいいんだ」
へー、いろんな野菜がありますよ。
本当だなとみんなが覗いてみています。
「木の実がいっぱい、あ、これ、この間食べました。焼き栗、おいしかったですよね」
「ああ、すごい数ですね」
「それでも森のため、次のため残すんだと、手の届くとこだけです」
さすがだな。
「ではこちらへ」
これは芋?
赤い芋、チーいわくサツマイモというイモを蒸かしたものがたくさん置かれています。
「切ってどうするんですか?」
枢機卿様、芋を五本の糸を張った道具で薄く切っていますと説明。
「干すんだ、乾いたら、そのままでも焼いてもうまいぞ」
端の方や小さいものはそのままで干すそうです、食べてもいいというのでいただきました。
「うまー」
「はー、これも甘い、ねっとりとした触感と芋なのに、甘くてうまい」みんながその味に感激していました。
今度は家の中だそうです、台所の隣の部屋に案内されました。
「うわー、お魚がいっぱい空に泳いでます!」
なんだと?
鮭、鱒、干して食べる魚です。塩漬けした魚を乾燥した風に当てて、乾かしています、終わったら、キッチンの天井に並べるように頼んであります。
なぜキッチンに?
煙で虫がつかないのと天井はあったかいので乾燥が進むそうです。
「塩だけか?」
「そうです、ではこちらへ」
桜は、よーく干したものをこれくらいに砕いてくれ、煙は虫をつきにくくするし雑菌を殺してくれる。カビも生えにくくなるができるだけ、生えたら取り除いてくれ。
「これは?」
「燻製を作っています」
「燻製?」
木をいぶして香りを付けます。
「ジャーキーは食べたことはあるかい?」
「はい、香辛料がたっぷりな干肉ですよね」
あれは味を付けた後干しておくんだけど、腐ったりするのを防ぐためにいぶすんだ。こうしておくだけでただの干し肉より柔らかくなる。これは塩漬けしたもの、脂身の多い肉を塊のままいぶすんだよ」
「いぶす?」
一定の温度にした入れ物の中に燃やした木の煙で香をつける、二重にした外側から熱を送るそうだ。
へー。
「これはマグロの油漬け、これを切って干したのをいぶす、小さく切ったのが、酒のつまみにはよくてな、味は二種類だ、後で味を見てくれ」
「でかいお魚がたっぷりの油の中に、これはお湯?」
マグロの油漬けも教えています。
それはソーセージか?
「そうだ、ソーセージは、ゆでる時間と燻製時間を変えることで日持ちする日が変わってくる、そのままでも食えるし、焼いてもゆでるだけでもいい」
「小さいな」
「小さい分歯ごたえがいい、もちろん大きいのもいいがな」
「じゃあ、冬山に持って行ってもそのまま食えるのか?」
「ああ、しっかり熱が入っていればな、そしてこっちは、皮に入れず油身を多めに入れ香辛料たっぷりで作ったサラミというもので、いぶした後干したものだ、外側のカビをきれいに剥がし、薄く切って食べると酒に会う、焼いて食ってもいい」
そりゃすごい。
ソーセージは帰りまでに作るからもっていってくれ、じゃあ他のを作ってみる、みんなやってみてくれ。
「いいにおい」
「素晴らしいですね」
「これだけでも冬助かります」
大きな肉の塊に塩をまぶして蓮の皮で包んで火の中に入れておくんです、蒸し焼きです。これだけで、ごちそうです。
グーとおなかの音が聞こえました。
「はずかしい」
「ピエール大丈夫だ、私も一緒になったぞ」
枢機卿様。
「ハハハ、まだまだ、次はこちらです」
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