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第17話 誕生前後の記憶 1
その夜、チーは俺を引っ張り、アイジュの部屋へ入りました、メルーも起きていました。
チーは、何でこの世界に来たのかはわからないし、何で女だったのが男になったのかわからないし。と言いながら、アイジュ兄ちゃんのベッドに這い上がり座った。俺はメルーのベッドに腰かけた。
「にゅんげん(人間)だったのがドラゴンになったのもわからないんだよね」と言った。
ただ言えるのは、今ここにいる私は、過去に、地球という星の日本という国で生まれた人間。野間千佐子として八十年生きて死んだという事を覚えている。
食べ物や変わったことをいうのは、“のまちさこ”の記憶だそうだ。
「そして今日からは、おお兄ちゃんだけじゃなく、メルー兄ちゃんにもニーニもそれを知ってほしくてここへ呼んだ」
「いいのか?」
「うん、でね、みんなにも手伝ってほしいんだ」
何を?
チーは頭の中にある、ちさこの記憶をアイジュ兄に書き留めてもらっている、でもそれだけでは足りないそうだ、もっと書き残したい、それは長老にも頼んだという。
「で、これな」
なんだ?本か?
「あれ、中真っ白だよ」
「ああ、これに、書き留めてほしいんだ」
「チーの事をか?」
「いいや、チー話してくれ」
「アイアイサー、これは日記」
「にっき?」
「うん、毎日、どんな事をしたのか書いてくれればいい」
「チーがか?」
違う―、その日起きたことをメルーはメルーの見た事聞いたことをかけばいいしニーニはニーニがしたことをかくから、三人とも違う事をかくようになるというのだ。
「同じようなことにならないか?」
「なるかもしれないが、それはそれだ、俺はほとんど上にいるからチーとの時間は短い、ジャルはほとんどチーといるだろ?」
「あー、同じ時間でもその時していることは違う、それに今だって、同じ事を聞いているけど、考えていることは別だろうしな」
「そういう事、それを毎日書くんだ」
「短くてもいいよ、ただ毎日かくの」
「大変だな」
「いつかいてもいいよ」
「朝起きて、飯食べて夜に寝た?」
「それでもいいけど、天気や寒い、暑いを書くと、次にはこんなことがあったし、こんな物を食べたって続くよ」
ふーん。
チーは、まだ言葉を話すのが精いっぱいで、文字を知らないから書けないというのだ、かけるようになったら自分で書く、でもそれまではみんなに頼みたいというんだ。
でもなー、いまでもチーのすることを書き留めているのに、これもかーと言うメルーには、これに書き写してもいいし、これに書けばいいというと、アーそれがいいなって言ったんだ。
メルー兄ちゃんは絵が好きだから絵をかいてもいい。ニーニは文字の練習になると言った。
アーそうだな。
前世の自分の姿を覚えているかと言われると、憶えていると言えるほどの自信は無い。
でもかすかに覚えている記憶を書き留めてもらった。自分が書けないから。
おお兄ちゃん、ありがとう、そしてこれからもよろしく、メルー兄ちゃん、そしてニーニ、これからもよろしくお願いします。と頭を下げた。
「それじゃあ、わたち(私)の話をするね」
チーは長い長い話だけど聞いてねと言いながら話しはじめたのだ。
チーの頭の中にある物語、それはとても不思議で、でもとっても興味深い話だったんだ。
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