SS「スマホの神様」

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古今東西、この世界には様々な神様が存在するが、現代には「スマホの神」が存在する。スマホの神様は代替わりする。新しいスマホが出ると、古いスマホの神様は消えるのだ。 ある日の夕暮れ、スマホの神様は夕陽を見つめながら呟いた。「私の寿命は短いだろうな」その声は異様なほど静かだった。 隣に座るガラケーの神様が、それに応じるように言った。「確かに短い。新しい機種が出れば代が変わる。だがそれは、人類が発展している証拠ではないかね」ガラケーの神様の声には、どこか懐かしさと誇りが混じっていた。 スマホの神様は、ゆっくりと首を振りながら考え込んだ。「スマホというもの自体がいずれ無くなるとき、私たちスマホの神はどうなるのだろうね」その言葉には、不安と興味が含まれていた。 ガラケーの神様は笑みを浮かべ、スマホの神様は続けた。「例えば、脳に直接コードを差し込んで通信するような時代になったら、脳の神が生まれるのか」ガラケーの神様は頷いた。「脳が神か。人類が存在する以上、永遠の神様だ」 スマホの神様は、目を細めた。「脳の神が生まれたら、私たちはただの過去の遺物になるのだろうか。それとも、私たちも何か新しい形で存在し続けるのだろうか」その問いは、夜が近くなった今、消え入りそうな声となった。 ガラケーの神様は、静かに言った。「私たちは人類の歴史とともに進化してきた。どんな形であれ、存在し続けるだろう」その言葉には、長い年月を見守ってきた自信が満ちていた。 その夜、二人の神様は星空の下で語り続けた。未来の技術、過去の思い出、そして神様たちの運命について。星々がきらめく中、彼らの声は静かに、そして確かに、響き渡った。 「私たちの役目は終わらない。人類が新たなステージへと進むたびに、私たちも新たな形で存在し続けるのだろう」とスマホの神様は決意を込めて言った。その言葉には、未来への希望が込められていた。 ガラケーの神様もまた、同じく星空を見上げながら微笑んだ。「そうだな。私たちはいつまでも、人類とともに歩むのだ」その言葉が終わると、静寂が再び彼らを包んだ。 そんな光景を、少し遠くで固定電話の神様が見つめていた。 次の朝が訪れると、スマホの神様は再び新たな日常の中で活動を始めた。ガラケーの神様と固定電話の神様もまた、その存在を感じさせることなく、静かに人々を見守っていた。 人類が存在する限り、神々の物語は続いていく。スマホの神もガラケーの神も固定電話の神も、その存在は消えることなく、ただ形を変えて人々と共に在り続けるのだ。技術がどれだけ進化しようとも、神々の魂は永遠に輝き続ける。そして人類を見守り続ける。それこそが神様の役目なのだ。
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