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新歓コンパ 第二段階<酒池肉林>
「泉水ちゃん、男の攻め方知らないのよね?」
泉水は答えるのに戸惑う。「攻める」という言葉自体どう解釈していいのかはっきりとはわからないでいるのだ。
「そうだよな。攻められたこともなさそうなのに、攻め方なんてわかるわけがない。……ああ、でもオンナの本能というのもあるしなあ……」
アケオが座卓に肘をつき威圧的に乗り出してくる。「オンナの本能」と、あたかも言葉の意味と発音を確かめるようにもったいぶって反復した時、いやらしさの頂点を極めたような笑みが顔中に踊った。
「じゃ、まだ処女の泉水ちゃんに見せてあげるわ」
よく見て東条さんに実践してあげなさい、といって間髪入れずアケオの顎を指でつまみ上げた。
「お、おいアケ……」
あっというまにくちびるが重なった。
「はっ!」
泉水の心臓が飛び上がったとき、悲鳴に似た声が漏れた。
男が女にボタンをはずされ、細い指で広い胸が撫でられ乳首がつつかれている。女が体重をかけてきて、男はその体勢のまま座卓の向こう側に沈んでいった。男の開いた膝の間にスレンダーなボディーがはまりこんだ。
「おー、とうとうカップル一つ、一線越えたぞ!」
誰かが叫んだ。そこへタガヤンのナイフのように細い声が気合をかけるように、
「よし! アケミ・アケオに続け! 酒池肉林だ!」
座敷にちらばったカップルたちの求愛がワンステップ濃厚さを増した。タガヤンも葉月に濃厚なキスを仕掛けている。泉水はどこに視線を持っていったらよいのかわからなず、途方に暮れる。
「泉水ちゃんが攻めてくれないなら、オレの方から攻めちゃおうかな」
東条がからだを寄せてきた。一瞬からだがこわばる。反射的に胸を隠す。男にこんなに接近されたのは初めてだ。筋肉質の腕が泉水の柔らかい腕に食い込んでくるようだ。
「ちょ、ちょっと、先輩……、あ、あのね……」
肩に回された手の先が胸の先に触れたとき、そこに静電気のようなものが跳ねた感じがした。一瞬身構えた。だが、この先輩ならいいか、といつになく寛容になっていた。座敷の雰囲気にも押されていた。
──いや、でも、出会ってまだ数時間なのに、この近さはちょっと早すぎかも……。あ、いや、さっき「カップル宣言」しちゃったし、このまま……。
泉水の心は揺れる。
「ハズのことはタガヤンに任せてさあ、泉水ちゃんはオレと……」
後ろから肩を抱き寄せられ、バランスを失った。片脚が上がってしまい、膝掛けが滑り落ちる。
「あっ!」
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