純潔、守るの

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 引っ込み思案の泉水にとっては珍しいことだ。快美感の切羽詰まった横溢のなかでも理性は強く残っていたらしい。逆にいえば泉水が守ろうとしていたものはそれほど大切なものだというわけだ。  すでに女の膝を割り、最後の薄布一枚を残したところで、東条は戸惑った。彼女の言葉を大切にしてやることが愛なのか、それでも愛の深さ分、からだの深いところも知ってあげるのが愛なのか、わからなかったのだ。勢いで剥ぎ取り、そこに自分のものを押し込むという道もあった。だが、男はもう一つの道、つまり、最後の薄布を元に戻し、爆発寸前の欲望を必死に抑えることを選んだのだった。  東条も経験がなく、したがって女を快楽にまで導く自信がなかったというのもあった。  泉水は開いた脚を腰を折りたたむようにして元に戻し、上半身を起こした。木漏れ日があらわになっている胸にまだら模様を落としていた。男に背を向け、ずり上がったブラを直した。サマーセーターについた枯葉と芝生を払うのを東条が手伝ってくれた。  新歓コンパの時はアルコールに毒されて、まともな判断ができなかったが、今となっては冷静な目で男女の関係が見れるようになっていた。せっかくお互い愛を高め合ってきたのに、ここで東条とひとつになることを想像すると、今まで味わってきた肉体的そして精神的な心地よさとは、何かがずれてしまいそうな気がしたのだ。デートを重ねるほどに築き上げられてきた何者かを守りたかった。  今まで世界に存在することさえ知らなかった大切な感情だからこそ。大切な関係だからこそ。  視線が東条の苦し気な表情にぶつかった。
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