わたしのからだ、先輩の宝物にしてね

1/8
前へ
/139ページ
次へ

わたしのからだ、先輩の宝物にしてね

 予測を裏切るどんでん返しに、東条も泉水の意図をつかみかねているようだ。しかし泉水は、いつ誰に見られるともしれない森影を脱し、ふたりだけになれるところ、誰にも見られないところに身を隠したかったのだ。東条がとても愛しく思え、離れたくないと思ったのだ。子供のように駄々をこねたかったのだ。 「先輩、わたしのこと美人だっていってくれたよね」  東条がうなずく。 「う、うん。キミは美人だ。顔も、心も、からだも、ほんとうにきれいだ!」 「だから、東条先輩にわたしの大切なもの、宝物、見せてあげる」  言葉とは裏腹にこの時泉水は両腕を交差させて胸を隠した。 「先輩にもっともっと愛されたいの。もっともっと近づきたいの」 「オレだって……」 「でもね、近づけば近づくほど、あたし……自分を大切にしなくちゃって思うの」 「……」  女性特有な感性なのだろうか。今一つ腑に落ちなかった。 「だって、わたしのからだ……東条先輩のものだから」  泉水はここも、ここも、ここもよ、と高価な宝石に触れるように二つの胸と、ショーツの中心を順番に手で覆った。 「オレの?」 「そう。東条先輩にあずかってねって、任されたものだから、わたし必死に守るの」 「……」  こういう考え方をする女はあまりいないだろうなと思った。でも、それを尊重しようと思った。 「先輩のものだから、先輩が保管状況を確認しないと。でも約束して。入ってきたらダメ。今日はね」  最後の一句を強調した。  東条のワンルームでシャワーを浴び、バスタオル一枚で男の前に立った。東条もすでにシャワーを済ませ、すでに全裸で泉水の前に立っている。  オレンジ色の薄明りのもと、男の裸体が存在と欲望を主張している。  スポーツジムに通っているとは聞いていない。それにしてもからだが出来上がっている。胸筋と腹筋がはっきりと輪郭を主張している。ひきしまった大臀筋は女性のそれとは明らかに違っていた。体毛が薄いから野性味は感じさせない。泉水の姿を見ると、(かげ)りから立ち上がったものがむくむくと体積を増し、臍に向けてピンと跳ね上がった。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加