15人が本棚に入れています
本棚に追加
あげようと思う。
わたしの中に迎えあげてあげようと思う。
神様、お願いです。この思いがあなたからの祝福でありますように。この思いが最後までわたしと先輩のよりどころでありますように。
正直でいさせてください。
涙が机に落ちる音で我に返った。
あけ放った窓のすぐ脇でセミが鳴き始めた。急に暑さを感じた。汗拭きタオルで涙をぬぐった。
時計を見て驚いた。
えっ? 11時半?
母の眼差しへの思いが東条への思いと重なり、東条への思いがいつの間にか祈りになっていたようだ。長い長い祈り。祈りは深く平安な夢のなごりのように泉水の胸にとどまっている。
本当の自分に出会ったような気がした。瀕死の傷を負った状態から必死に再起しようと、羽ばたこうとしている自分。
泉水は腕を伸ばして机の前の窓を閉めた。腰をかがめ扇風機を消した。
そしてこともあろうに、机の引き出しからリモコンを探り出し、エアコンのスイッチを入れた。はじめは不穏なかすれたような音を上げていた白い箱が、やがて涼風をおくってくるようになった。
葉月と一緒に買い求めた水着を引っ張り出した。身に着けていたものを脱ぎ捨てると、水着を着た。胸と腰に合わせて紐の長さを調節した。フィッティングルームで試着したのに、その時よりより面積が狭くなっているような気がする。そんなはずはないのだけれど。人より薄い翳りでさえはみ出てしまいそうだ。部屋を大きく二、三週するとお尻にくいこんで焦った。だが、これでいいのだと思い直した。
だって、処女を捧げるためにつける衣装だから、先輩にエロチックな刺激を与える方がいい。
水着はわたしのウエディングドレス。これを東条先輩に脱がしてもらうの。そして……、
一つになるの。
最初のコメントを投稿しよう!