アタシは淫教の伝道師

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 恥ずかしい思いをすればするほど、侮辱されればされるほど、淫乱女の(そし)りを受ければ受けるほど、罪が自覚される。自分の犯した罪ばかりではない。自分をこの世に産んだ両親の罪、遠くさかのぼる先祖の罪。日本人としての罪。罪の認識が深ければ深いほど、救いの道はよりはっきりした道筋で、より広く、より深く開かれるという。  とすれば、アタシは優秀な信者だ。男に女の最後の砦である薄布を奪われたまま四つん這いになるという恥ずべき行為をやっているのだから。こんなことができるのは、性的にだらしのない血統を受け継いだからだと確信しているのだから。  さらにアタシは優秀な伝道師でもある。だって、大学で一番の美女、泉水を導いてきたのだから。本人には歌声サークルが教団の出先機関だなんて話してない。彼女を穢すことにより罪を認識させ、浄化の儀式で浄め、救いの道を開いてやることがアタシに与えられた使命。  使命を全うすれば、タガヤンとゲルに称賛される。  アタシは中学生の時からしてきた。気に入った男子を自分のモノにするために惜しみなくからだを提供してきた。気に入らないコのカレシだって、白昼の教室で堂々と奪ってきた。制服のスカートは膝までという校則はそのためでしょ? 校内で男女がつながり合ってもほかの生徒には見えないようにという教師たちの、大人たちの配慮なんでしょ? ちがう?  両親はダブル不倫だったみたい。きっと両親の両親も、そのまた両親も淫乱だったのよ。アタシが淫乱なのはそのため。アタシのせいじゃないよ、ゼッタイ! それは遺伝により子孫に伝わる罪なのだとタガヤンにいわれた。だから両親もアタシも自分たちの罪を認め、ゲルにより救われなければならないと。  泉水もあんなおとなしそうな顔しているけど、本性は淫乱に決まってる。先祖もセックスで罪を犯していると思う。まっさらな人間なんているわけないじゃない。  彼女、アタシの親友だけど、いまだに処女だってことが唯一気に入らないところ。それで聖女ぶっているような気がする。あの気の弱そうな表情だってネコかぶってんのよ。東条先輩だってそう。童貞だから自分が清らかだと思い込んでいる。  だから、罪を認識させないと。  わたしとタガヤンの見ている前で、自分たちが淫乱であることを悟らせないと。そうしなければ、泉水にも、東条先輩にも救いの道は開かれない。  さて、どんなシナリオを用意しようか。
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