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夕日に酔って
日が落ちるころ、5人とも心地よい疲労感に酔っていた。太陽があって山と海があって、男がいて女がいて、オレンジ色に染まった半裸体の若い肉体があって。軽い情欲のうずき、そして少しだけ生きることに倦怠感を感じていて。
もし今この瞬間世界が終わりを迎えても何の後悔もないだろう。命の、そして青春の謳歌がほんの刹那に過ぎないことを若者たちは本能で感じ取っていたのかもしれない。
朝6時に出発したのに、海岸に着いたのが午後の2時を過ぎていた。本来なら2時間の道のりを8時間かけたことになる。
青春には寄り道が多すぎた。
サービスエリアにはいちいち寄ってみなければ気が済まなかったし、途中の景勝地に降り立っては、一人で、カップルで、男どうしで、女どうしで、そしてみんなで写真を撮り、5人のうちひとりでも満足しなければ、何度も何度も撮り直しをしなければならなかったし、SNSで名物とうたわれたものなら、その店のすべてのメニューを注文し分け合わずにはいられなかった。
目的地についても若者たちは勢いを失わなかった。着替える時間も惜しんで浜辺に飛び出し、夏の太陽が大海原に沈みかかるこの時間まで、5人は泳ぎ回り、追いかけ回し、逃げ回り、じゃれ合った。無論ほかにも海水浴客もいたが、渚沙に残された足跡のほとんどすべてが彼らのものではないかと思われるほどだった。
「アタシ、眠くなってきちゃった」
バタリと葉月はビーチマットに大の字になった。大きな胸が頼りないビキニの下ではずんだ。手にしていたビーチボールがころりと落ち、真っ白の砂を巻き込みながら東条の足元に転がっていく。それを海に向けて思い切り蹴ると、アケミと泉水が、ケラケラ笑いながら追いかけていくのだった。二人の蹴りあげた砂がキラキラと輝いたかと思ったら、東条とタガヤンの顔にかぶさってきた。
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