夕日に酔って

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 ──あの二人の仲の良さ。  東条は膝の上あたりまで海水に浸かっている泉水とアケミに目をやる。  ──あの過度の親密さも演技だろうか。泉水は陰謀があることなど知る由もないから、アケミにじゃれつくのはきっと本心からだろう。  アケミが水中にしゃがんで泉水のショーツの紐を直してやっている。 「お姉さんったら!」 「いいじゃない、泉水ちゃんかわいいんだから……」  甲高い声が30メートルほど先からここまで届く。東条は鼓動が早くなる。  アケミの背中で隠されて見えないが、紐が左右ともほどかれてしまったのではないだろうか。立っている泉水が内股になり、両手で下半身を隠している。しゃがんでいるアケミが泉水の下半身をまさぐっている。 「あっ、だめっ! 砂が入っちゃう!」  舞い上がるスカートを抑えるマリリンモンローポーズだ。 「泉水ちゃんにそんなことするはずないでしょ」 「くすぐったいです。あっ!」  背景の夕日が大きい。二人の姿はまるで影絵のように黒ずんでいる。とても美しくもあるし不気味でもある世界から二人の声が届けられる。  あんな姿、ほかの海水浴客には見られてないだろうか。  東条はぐるっとまわりを見渡した。  彼らの砂浜は、三方がコの字型に白い崖に囲まれていて、西方だけが大海原に開かれている。南北に弓状にゆるやかに長く伸びた砂浜とはうまい具合に隔離されていて、海水浴客の声も視線もほとんどここまで届かない。あの程度の距離なら大丈夫なのかもしれない。東条はほっと息をつく。
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