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学校帰り、隣を歩く友達がそう口にした。
確かに今日は暑い。まだ六月だというのに最高気温は三十五度を超えているとかで、歩いているだけで汗をかく程だ。
だからって、それを言葉にしてもどうにもならない。むしろ、言えば言う程暑さが身にしみるだけだ。
それでも友達はひたすら暑いと連呼し、さらには、
「こんなに暑いと、体が溶けて蒸発しそうだよ」
そう口走った瞬間、友達の全身から煙が噴き出し、あれよあれよという間に友達の姿は消えてなくなった。
本当に蒸発した…?
ふと思い出した、国語の時間に習った『言霊』という言葉。
言葉には不思議な力が宿っていて、口にすることで、それが言葉通りの結果をもたらすことがあるという。
どうやら友達は、その力で、自ら発した言葉の通りになってしまったらしい。
突然のこと過ぎて悲しむことも驚くこともできず、ただ俺はそんなことを考えながら、さっきまで友達のいた空間を見つめ続けた。
言霊…完
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