②親友との再会

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②親友との再会

 入学初日に担任の中川咲良先生(20代中盤)から、これから6年間の学習内容の流れが簡単に説明された。  陸人が前世で過ごした「6年間の小学校時代」とは、校舎のハード面も、学習カリキュラムも”完全に”別モノになっていた。  小学校の3年生から英語(英会話)が始まり、高学年になると「プログラミング」も習うらしい。  家で陸人はAIのチャットGPT関連のニュースも見ていた。驚愕の内容だった。この世代が大人になる頃に選べる職業が全く想像できなかった。  ただ、「学び直しできる事」を陸人は楽しみにしていた。  本当に「学びたい」と思える欲求は、社会人を経験してから訪れる。 日々の時間の使い方を大事にしなければならない。  今の両親に迷惑をかけない為にも、とりあえず担任の業務進行には口出しせず、陸人は「大人しくしておこう」と心に誓った。   教室は常に空調がきいていて、部屋の隅には巨大な液晶パネルのテレビもあった。入学式のオリエンテーションの最後に、学習用の真新しいiPadが生徒全員に配布された。 「これは何かスポーツしないと、自律神経やられちゃうな。」  陸人は、「令和の小学生生活」を楽しんでいくつもりだが、どうしても物事の視点が38歳なので、20代の先生たちの明らかに効率の悪い仕事の進め方(前世の新人社員をみてるようだった)や、文科省が「教師」という職業に、いかに無茶な業務量の事務作業を与えているかを客観的にみることができた。  教師には前日と同じ恰好をしてる者も居た。サービス残業で深夜になってそのまま学校に宿泊したのだろう。  どの業界にも似たような働き方を強いられてる者がいる。  「本当にする現代人の働かせ方は、どうかしている。」  1年生は15人全員同じクラスで、男子:女子の比率は大体50%ずつくらいのバランスだった。6年間、このメンバーで過ごしていく。  こどもの段階では皆が可能性に満ち溢れている。自分は明らかに経験値では飛び抜けてる(※人生2度目なので)僕がそれぞれみんなの原石部分を見つけて、本人たちに気付かせたいと思ってった。  ただ、皆の名前を覚えるのには苦労した。 これには教師もさぞ苦労しているだろう。漢字表記だけではまず読めない名前もいくつかあった。  カレンダーから、今が前世の死後すぐ転生したのだと分かっていた。 この第二の人生をサポートしてもらうに、前世で親友だった秀島和明にだけはこの事実を打ち明けたかった。  ある休日、陸人は和明のマンションまで自転車をキコキコと走らせた。 自転車で行ける距離に住んでてくれて助かった。  陸人がマンションに着き、エントランスのカメラ付きの呼び鈴を押すと、すっかりオジサンになった親友の顔が映った。  和明は「ん…子供か?いたずらとか勘弁してくれよ。坊主どーやってここに入った?」と呼び出しを切ろうとしかけた。  陸人がおもむろに「奈月、環奈、美咲、友里…全部言おうか?」と言うと、和明は目を丸くし、「いやいやちょっと待って、すぐそっちへ行く」と行って、エントランスまで走って降りて来た。    和明の歴代の彼女を全部知ってるのは、親友の桐谷翔太だけだった。  訝しげに初めて会う小学生を見ながら和明は質問をした。 「お前、本当に翔太の生まれ変わりなのか?」 「しかも前世の記憶がしっかり残したままな。しかし、いかんせん身体がこのサイズだし、行動範囲も縛られてるから、たまに和明にチカラになって欲しいんだ。」 「チカラって言っても、俺の出来る範囲なんか知れてるぜ。 しかしスゲーな。記憶を残した輪廻転生なんて、映画やアニメの世界だな。」  和明は笑ってそう言ったが、「令和の小学校」は想像以上に問題に溢れた場所だった。  ③へ続く
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