1-5 花々の協力

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1-5 花々の協力

「私のうっかりで、彼女の団子に毒は入っていない。ですよね、瑚灯さま」  食べた瑚灯が頷く。  それから「しかし大男の団子は毒入り、もしそちらを食べていたらどうだ?」と試す言い方で訊ねた。  茉莉花はあり得ないと断言する。 「大男さまの注文通りならば、自分のと女性のでは毒の成分量は異なります。わざわざ指定したのですから、己のは女性には良くないのを自覚しているはずです。仮に女性が大男さまの分を奪って食べた、というのおそらく違います」 「さて根拠は?」 「彼女の立場と心情からして、進んで食べようとしないでしょう。それに……」  それでもおかしいのだ。そもそもの間違いがある。 「一口食べて、悲鳴をあげる毒ではないでしょう」  毒を飲んだ人間など目撃したことがないが。  茉莉花が運んで外に出る、その間十秒も満たない。何より襖を閉める際には、まだ手をつけていなかった。となれば、十秒どころではない。  口に入れて即、だろう。それも飲み込まず形が整っていたから、歯で噛み切ってすぐさま吐いた。咀嚼(そしゃく)すらしないで食わずに。あの金切り声のような、苦しみより恐怖のような叫びは少々ひっかかる。 「ところで瑚灯さま」  これ以上の収穫は見込めない。  二人で部屋を出て廊下を歩く、事件があったのに他の座敷は通常営業らしい。  こういう些細な部分が、現世とは異なっていて、何処か異様で怖いと感じる要因だ。  普通なら客も全員帰るだろうに、さして興味ないとばかりに、他のものは平常に楽しんでいる。
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