0.艶やかな妖狐

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 雪のような白い肌に、赤い提灯の色がうつる。小首をかしげれば、烏の濡れ羽色の髪が頬にかかった。朱と橙色の彼岸花のピアスが、耳元でしゃらりと揺れて煌めく。  皆が足を止めて見惚れ、感嘆の声があがる。  そして吸い込まれるように『狐花(きつねばな)』に入っていった。なんという吸引力。 「せっかく外に出たんだ。ちょいと手伝いしなきゃ叱られちまう」  ふふ、と紅色の唇が弧を描き、熱っぽい吐息をこぼす瑚灯に、頷いた。  誰が怒るのか。花街にある店のほとんどが、瑚灯が経営しているのに。  茉莉花の無駄な思考の間にも客は途切れず入っていく。蟻の行列のごとく続々と。 (効果抜群だ。今日も大繁盛(だいはんじょう)間違いなしだな)  すごすごと裏口へと向かう。  従業員専用入り口は、少し離れた場所だ。急がないと、本気で怒られてしまう。いや怒られるだけならまだいい、芍薬姉の過保護が発動したらえらい目に合う。下手したら外に出さないと言い出しかねない。  どうかそうなりませんように、祈りながら支度を急いだ。大忙しの狐花での仕事の始まりである。
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