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大男の不躾な視線が舐めるように、全身を検分する。品定めして下卑た笑いで茉莉花を見下した。
「そりゃそうだ。貴様がハナメなんぞ、この店の程度がしれる」
ハナメ――。
茉莉花のような下働きではなく、来店客を相手する表舞台の主役の役職名だ。
とんでもない美女美男、教養もあり芸も達者な優秀なモノだけがなれる花形。
茉莉花のような平凡以下では務まらない。
(私なら客との会話一分保たないぞ)
自慢ではないが己の顔は鉄で出来ているのか、一切表情が動かない。
笑っているつもりだったが、同僚に「茉莉花、お前、無表情で何考えてるかわかんないし不気味なんだけど」と冷たい目で頬を抓まれた。失礼な、腹抱えるレベルですって伝えると遂には哀れみの目になった。
「……ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。もしよければ」
「いいや、お前だ。粗相をした本人が責任を取れ」
(してない)
いや粗相だったのか。自信がしぼんでいく、ここまで強気に出られると、何が正しいのか曖昧になる。
(いやいや、弱気になるな)
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