1-1 招かざる客

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 落ち着け。いくら不器用で、することなすこと失敗に終わる自分でも、今はまだ大きなミスはない。 「申し訳ごさいません。ただの下働きがハナメの役につくことは」 「さっさと来いッそこで」  ばっと振り上げられる手に、小さな悲鳴が聞こえた。    本当に話を遮ってばかりだな。 (だけど、まぁこれは良い流れかもしれない。この客を入れたらハナメが大変な目に会うかもしれないから)  殴られたら出禁コースに入りやすい。  歯を食いしばり、じっと迎え撃つように見据える。  が。 「――おいおい、花街での暴力は一切禁じられてるんだがな」  ぱしん、と茉莉花の胴ほどある腕を軽々と受け止める影。  呆れたように、だが何処までも余裕と艶やかさだけは失わない姿。ふわりと揺れた髪に、着物に焚きしめられた香りが、茉莉花を守った。  まるで見ていたかのような、ナイスタイミングってやつだ。彼はいつだって、ここぞというときに頼りになり、必ず来てくれる。彼の背に庇われた茉莉花は、客に気取られないよう、ひっそりと息をついた。  彼が来た以上、万事上手くいく。艶やかに、たおやかに、まるで舞いでもするかのような優雅さで圧倒するだろう。
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