1-2 枯れかけた花

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(また、迷惑をかけてしまったな)  拾われた恩義(おんぎ)。必ずお役に立つと心を決めたが、どうにもうまくいかない。  庇われたまま、沈黙が落ちた。  おそらく瑚灯の気迫に押されてしまったのだろう。  逆上しないのは正しい判断だ、案外悪い客ではないのかもしれない。  しばらくして大男は、ぼそりと「すんません」と謝った。  次いで媚びるように下手に出て、へへ、と笑う声。 「すいやせん、本当に。待ち遠しさあまりに我を忘れて、悪気はなくて」 「悪気なく、女を殴ろうってか?」 「いえいえ滅相もないっ! そんな、ほんと、いえね、実はですね、急いでいたのは理由があるんですよ」  瑚灯が紫水晶の瞳で見定めるように、大男を眺めた。感情を排除した無機質な冷たさ。しばらくして、ついっと茉莉花に視線を移す。  茉莉花は瑚灯の求めに答えるため、己自身で情報を整理する。  大男は短気なあやかしだ。  ハナメへの危害の可能性から入店は拒否するべきかもしれない。  が、その男の陰に隠れるように、ひっそり佇む女性が気になった。  
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