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青白い肌に、こけた頬。
豪華な着物に懐剣や耳飾りなどで装飾された女性。不健康そうかつ病的に細いせいか、重たい着物が浮いて見える。
落ち着かないのか空いた手で帯にある紫色の花の根付けをいじっていた。
きょろきょろ、と忙しなく目線を彷徨わせて、呼吸も安定していない。僅かに体が震えているのは寒さからではないだろう。
――どうにもここで出禁、という訳にはいかないようだ。
嫌な予感が消えてくれない。
瑚灯は茉莉花と同意見なのか、無言でも伝わり静かに身を引いた。
それから「うちの従業員を傷つけないなら、構いやしないさ」と釘を刺した。
ならば茉莉花も、いつも通りに仕事をするだけだ。一呼吸置いて、緊張を悟られぬように努めながら口を開いた。
「それではお客様、お食事についてですが」
「お、おおっそうだそうだ。食事だ! ここのがうまいと聞いてな! 祝いなら是非ここがいいって勧められてなぁ!」
無理矢理に話を戻すと、大男は大仰に柏手を打って喜びを表す。
大男は、ちらちらと瑚灯の様子を確認するが、瑚灯はどこ吹く風で周りの視線も声も無視し、柱に撓垂れ掛かる。
肩からこぼれた髪が、無駄に艶やかさを醸し出している。
今は客寄せも必要ないから、しまってほしい。
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