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「いえお気になさらず。こちらへ」
目配せで別の子を大男の案内を任せると、女性に軽く会釈をする。
すると明らかにほっと安堵した表情を浮かべた。
大男は思い通りにならなかったのが気に食わないのか、不服そうに顔をしかめていたが、瑚灯の前だからか大人しく座敷へと消えていった。
(ずいぶん、よろしくない態度で)
茉莉花は口には出さないものの、大男の言動に、いささか困ってしまった。人間に対して、ああいう態度のあやかしは、花送町で、あまりいないのだが。
今のところただの客で問題は……あったが、大事にするほどでもない。女性についても、こちらが介入する隙はない。
あくまで客と従業員。茉莉花の予感は、想像の域を出ないので、変に刺激を与えたり動いたりするのはご法度である。
気にしてても仕方ない。切り替えるようにゆっくり瞬きしてから、女性へと向き直った。
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