1-3 変わった花街

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「……外で気軽に話せればいいのですが、自分とは違う存在と緊張するから、こういうところで実際の人間やあやかしと対話して事前知識を得て、本番に備えるんです。外で友達に、親友に、知人になるよう、よりよい関係を築くための勉強の場です」  ただここでの話は楽しいからと、学んだ後も遊びに来るのが多い。それで常連がいて、繁盛している。  ハナメに美女美男が選ばれるのは、まぁ、悲しいが見目麗しい方が印象が良いのだ。  仕方ないで済ましたくない事実である。  だがそのおかげで、平々凡々な茉莉花がハナメにならずに済んだのも事実だ。正直、特出した芸もなければ教養、話術もないので、お稽古あたりでリタイアする自信がある。 「――という、ので。つまり誰かが誰かを売るなんてことはないのです。従業員は全員希望者です。人気職業だそうですよ。ハナメになるのは、かなりの努力がいるのですが」 「そう、だったんですね。わたくし、てっきり」  花街と言われれば誤解もする。    それに昔は、本来の意味で花街だったらしい。  今は身売りなどの単語は一切聞かない。客も、それが目当てなのを見たことがない。  女性は気が抜けたのか、がくんとその場に膝をつく。  茉莉花はすかさず支えて背中をさすれば、女性の目には涙が浮かんでいる。  よほど恐ろしいかったらしい。身売りと勘違いしていれば当たり前だが。
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