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1-4 団子の毒
大男は怒りあまり、殴らん勢いである。
「アレがだめになったらどうしてくれる! 弁償してくれるのか!」
弁明は出来る。証拠もある。真実も大体は読めた。
しかし、いかに大男を逆上させぬよう語るかが問題だ。
落ち着かせる言葉を探していると、担当していた美女のハナメが頬に手を当てて、のんびりとした口調で茉莉花を引き留めた。
「茉莉花ちゃん、こちらの方は厨房にお招きしましょう」
「……いえ、それでは」
「現場保存? よくわからないけど、殺人事件場を荒らすのはよくないのでしょう?」
「芍薬姉さま」
(死んでないんですよ)
とんでもない発言だったが、頭に血が上った大男の耳には入っていなかったようだ。失言は勘弁してほしい。
ハナメとして、大男の座敷についた芍薬姉はお淑やかに微笑んで、垂れた猫耳をぴくぴくと動かしている。
彼女は狐花の一番人気だ、色々慣れているので任せたが、嫌な場面に居合わせてしまった。
「申し訳ございません。料理長から説明いたしますので、こちらに」
「くそっこれだから人間は! 普通不手際があった方が来るのが当然だろう!」
「申し訳ございません」
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