1-4 団子の毒

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「もちろん店主殿は釈明しに来るんだろうな、あのアレにもちゃんと謝ってもらうぞ! 店主なのだから――」 「ほらほら、こちらでございます。きてくださいな」  何かしら言うつもりだった大男の腕に、芍薬姉が抱きついて(さえぎ)る。  おっとりとした母性溢れる魅力を持つ彼女に、大男はわかりやすく鼻の下をのばして、だらしない顔になる。  彼女は周りの空気を強引に和やかにする。あやかしの力なのか、天性の才能なのか。茉莉花は分からない。  デレデレと連行される後ろ姿を見送り、息をつく。  これで調べられる、大男には悪いがいてもらっては困るのだ。 (さて)  ぐるりと見渡して、散らかった食事を検分する。  大男はすでに白い団子をいくつか食べている。  女性の配膳(はいぜん)された器を覗けば、団子が一つ消えていた。  畳に小さくられたのが転がっている。全部ではなく、半分食べて倒れたらしい。座布団の付近に、その噛み切った部分も落ちている。どうやら飲み込まず吐いたのか。  月見団子に似ている。  白玉とも。それの注文はいくつも受け付けており、彼のこだわりも良く聞くのだから気にしなかったが。 「……うーん」
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