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大丈夫、とは知っている。
女性の団子をひとつ、摘まんで思案すること数秒。
覚悟を決めるか、と口を開けて、
――食うんじゃねぇよ、馬鹿が。
声が内から響く。
久しぶりに喋ったと思えば、一言多い。
聞き慣れた乱暴な制止を無視して、団子を近づけようとしたが。
「――あーん」
「うわ」
後ろからひょいっと手首を掴まれた。
そのまま手の中の団子をぱくりと食べたのは。
「……瑚灯さま。来られたんですか」
「ああ。騒ぎを聞いてな」
濡れた赤い舌をちろりと覗かせて、なまめかしく唇を舐めた。瑚灯が意地悪く、笑う。
わざとだろう、潤んだ瞳を細めて茉莉花は見つめる。
何も知らぬものなら勘違いしてしまいそうな程に、熱を孕ませて、蕩けるような吐息が絡む。
思わず重いため息をついた。
「瑚灯さま、遊ばないでいただけると嬉しいです」
「仕置きだ。観念して受け入れな」
「仕置き?」
「危険な行動はやめろ、と言ったはずなんだがなぁ?」
怒っている。
笑っているし艶美さも消えていないが、とても怒っている。
そして自分の魅力を分かっていての行動。
ずるいあやかしである。
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