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まずい、非常に。
茉莉花はさっと彼から視線をそらして、事件について話を戻した。
「瑚灯さまも、知っているでしょう――この団子には毒は入っていない」
そうだ。
こちらの団子は問題ない。
瑚灯も当然だと頷く。
「うちの料理長は腕は確かだ。客の好みに合わせる。間違うはずない」
茉莉花は取り出した紙を丁寧に広げた。
自分の走り書きだ、大男から受けた調理の好みが書いてある。
しっかり茉莉花の口から料理長に伝えたので、間違いない。大男の注文内容は、
「『自分の分は毒あり。女には少量、死なぬ程度の毒あり』。か」
「はい。好みに合うように、と言いました」
「は、好みに、ね」
にやりと笑う瑚灯に目をそらす。
あやかしは人の心を読むのが通常なのだろうか。それとも瑚灯が特別なのか。彼に隠し事ができた試しがない。
「あやかしには、毒を好むのもいる。それは三ヶ月で理解してます」
「ああ。毒が単純に好物な場合や、毒しか食えないやつ。それらを考慮して、どの店にも毒は常備してある」
「とくに、この団子はそうですね」
団子――彼岸花の団子である。
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