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本来は毒性があるが、しっかり毒抜きすれば食べられる。
ただ手間がかかるので、本来は非常事態でもなければ食材に選ばれない。
が、しかし。
花送町では名物料理だ。
町の象徴である彼岸花を使った料理は好まれる。
「普通に毒とか怖いので、食べたいとは思いませんけど」
「まぁ人間は食わないのが安全だな。毒抜きを怠れば下手すると死ぬ」
どれくらいで、とかは聞かないでおこう。
もし他に食材がなくて困った際には、必ず毒抜きをしっかりする。確か本来の彼岸花の団子は飢饉などのときに作られていたはずだ。
記憶喪失なのに、こんなことばかり覚えている。
「で、女性のは手違いで毒抜きを用意したんだな?」
「はい。うっかり、少量と間違えました。申し訳ございません」
「そうか、罰として一週間、お前のおやつにはさくら餡がぎっしりつまったまんじゅうがつく」
至極光栄。
お礼を言いそうな口をきゅっと引き結び、ふるふると首を振った。
今はそんな場合ではない。
いったん忘れて事件の捜査に戻らなければ。
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