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1-6 お出迎え
「お待ちしておりました」
裏口で待つこと数分。
がちゃん、と鍵を壊す音と共にひっそりと現れた人影に、極力おびえさせないように声をかけた。
だがあまり意味はなかったらしい、相手は引きつった悲鳴をこぼし、その場に尻餅をついてしまった。
(しまった。私ではあまりに無愛想だから、安心させられない)
認めたくないが、己の顔が死んでいるのは事実。
こういう対人が得意なのは瑚灯や、ハナメなのだ。
自ら名乗り出て何だが、キャスティングミスってやつかもしれない。
(こうなったら直球に)
「助けに来ました。あなたを逃がします」
「え……」
彼岸花のような狐火が、照らす。
そこにいたのは、当然。
「何故、わたしが、ここにいるって、知っているんですか」
――団子を食べて倒れた、女性である。
月明かりのせいではない、蒼白な女性に背を向けて「ついてきてください」と告げる。
彼女は警戒したようだが、逃がす、という発言におずおずと後ろから気配が追ってくるのが分かった。
静かな空間に女性はやはり、か細い声で再度「どうして」と訊ねる。
逃げ道は遠い、会話を続けた方が安心させられるだろうか。茉莉花は悩んだ末に口を開いた。
「私はあまり頭がよくありません。ですので、単なる勘違いの可能性もあります。それでも聞きますか」
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