1-6 お出迎え

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「……お願いします」 「そうですか。では、まず初めから。おかしいと思ったのは」  推理にもならないお粗末(そまつ)な考えを、茉莉花はつらつらと語り始めた。 「来店時。大男さまと貴女さまの関係です。恋人とは明らかに違い、主従関係……いいえ隷属(れいぞく)、服従でしょうか」  アレ、だの、手首を引っ張る動作など。  愛など感じない扱いに、女性のやつれ具合。 「そして腕の痣、あれは縛られた跡ですね?」 「……はい」  お手洗いのときに覗いた、腕の赤黒い痣。  あんなもの普通はつかないだろう。 「それに加えて、彼岸花の団子を貴女の好物だと大男さまは伝えました。そして死なない程度で、苦しむ毒を入れるように指示しました。貴女は聞いていたのに反論すらしない。それは慣れている、と考えられます」  想像ではあるが、毒に反応しなかった。気力すら(うば)われていたようだった。死人のように諦めて受け入れている。  それらをまとめると、一つだけ浮かぶのは。 「貴女は、日常的に虐待(ぎゃくたい)を受けている」  沈黙は正解、らしい。女性からすすり泣きが聞こえてきた。  思わず黒い手袋に包んだ己の手を、彼女へと向ける。  遠慮がちに触れれば、それを優しく握り返してくれる。(みちび)くように連れて行く、  泣き顔を見られたくないのだろうから振り返りはしなかった。 「毎日、どくを、たべさせられました」  抑揚ない声だ。  死んでいる、と茉莉花は思った。
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