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その後、拾い主のあやかしが経営している店で下働きとして雇ってもらい、働かせてもらっている。
行く場がなく、面倒な体質になってしまった茉莉花にとって、有り難い話だ。
(早く仕事に慣れて、恩を返さないと)
よし、と自分に気合いを入れて花束を抱え直す。
いつも通り声かけしてくれる彼らに返事しつつ、帰り道を進んだ。
たまに見かける虚ろな何かに少しだけ意識を持って行かれるが、構ってはいけないよと言いつけられている。茉莉花では取り込まれてしまうだけだから。またひとり、何かが青い炎を持ってすれ違う。
皆、少しずつ特徴が違うのに、識別が出来ない。ふるりと頭を振って、前を向く。
ぽ、ぽ。提灯がひとりでに点いて、道を照らしていく。
どうやら本格的に花街が動き出すようだ。
店の中から同じ下働きの子や、客寄せのために披露される舞、楽器の奏でる音楽が花街を彩り、活気づいていく。
(まずい。遅くなっちゃった)
猫耳をはやした女性の横を通り過ぎて、早足で向かう。
明らか人外の男が、金魚を覗いているのを横目で見つつ、急いだ。
すると、ひときわ大きく輝きを放つ建物に辿り着く。
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