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豪奢な見た目、涼しげで清らかな川に朱色の橋。いつ眺めても、見事の一言につきる。これほど美しい建物を、他に知らない。
茉莉花の感性では(お金が湯水のように使われてそう)ぐらいの感想しか出ないが。
思わず立ち止まっていると、ふと、店前で気だるげな男を見つけて逃げたくなった。
男は柱に背を預けて、煙管をくわえる。
そして、赤い唇からふぅと紫煙を吐き出す様は老若男女の誰もが見惚れ、呼吸すら忘れさせるほど艶やかだ。むせかえる色香が全てを惑わせる。
腰より長い、絹のような黒髪を払い、紫水晶の瞳がつい、と流す。そのあだっぽさに、立っているだけで人が寄ってくる。
客寄せだ。
この世のものとは思えぬ、女と見紛う美丈夫は、己の美貌を最大限に利用する。
彼が、茉莉花の恩人。人そっくりに化ける九尾、狐のあやかしである。
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