0.艶やかな妖狐

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 買い出しが遅くなったら外で待つ程度には。  しかし茉莉花は飴玉もらって、ほいほいついて行く年齢ではない。指摘したところで、生暖かい眼差しで頭を撫でられるだけなのだが、いささか心外である。 「ん、ほら髪飾り曲がってるぞ」  指摘されて、髪に触れる。  どうやら【茉莉花】の花飾りが、とれかけているらしい。直そうと手探りでやってみるが不器用なせいか、上手くいかない。  瑚灯が愉快(ゆかい)げに笑った。 「そら、直してやるから、かしてみな」 「ありがとうございます」  瑚灯の手を煩わせるのに申し訳なさを感じながら、素直に差し出す。  間違いなく自分がやるより、手早く済ませるだろう。  忙しい彼の時間をこれ以上、奪いたくない。 「お前の髪は綺麗でいいな。花飾りがよく似合う」 「そうですか?」  最低限な手入れしかしてない、茶色の髪をつまむ。  美しいというのは、艶やかな烏の濡れ羽色した瑚灯の髪のことを指すだろう。絹のような手触りだろうと一目でわかる。 「いいんじゃないか。優しい色で、お前によく合ってる。俺は好きだ」
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