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買い出しが遅くなったら外で待つ程度には。
しかし茉莉花は飴玉もらって、ほいほいついて行く年齢ではない。指摘したところで、生暖かい眼差しで頭を撫でられるだけなのだが、いささか心外である。
「ん、ほら髪飾り曲がってるぞ」
指摘されて、髪に触れる。
どうやら【茉莉花】の花飾りが、とれかけているらしい。直そうと手探りでやってみるが不器用なせいか、上手くいかない。
瑚灯が愉快げに笑った。
「そら、直してやるから、かしてみな」
「ありがとうございます」
瑚灯の手を煩わせるのに申し訳なさを感じながら、素直に差し出す。
間違いなく自分がやるより、手早く済ませるだろう。
忙しい彼の時間をこれ以上、奪いたくない。
「お前の髪は綺麗でいいな。花飾りがよく似合う」
「そうですか?」
最低限な手入れしかしてない、茶色の髪をつまむ。
美しいというのは、艶やかな烏の濡れ羽色した瑚灯の髪のことを指すだろう。絹のような手触りだろうと一目でわかる。
「いいんじゃないか。優しい色で、お前によく合ってる。俺は好きだ」
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