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髪色を褒められたのは初めてのせいか、心からわきあがる感情が溢れ出そうになる。
嬉しくてたまらない、泣きたくなるほど、褒められただけだろうと、自分の気持ちは勝手にはしゃぐ。
嬉しさと、名前のわからない不思議な思いがふわふわと、茉莉花を包みこんだ。
おそらく顔に出ていないのだろう、茉莉花は言葉で「ありがとうございます。すごく嬉しいです、私も好きなので」と伝える。
抑揚がない声音が棒読みのようだったが、瑚灯にはちゃんと伝わったらしい。
「そうか。なら大事にしな。……よしできた。今日も別嬪だな」
「瑚灯さま、あまり女性を持ち上げると勘違いされますよ」
「安心しな。相手は選んでいるさ」
本気にする女性には言わないのか。なんというか流石だ。流石すぎて少々たちが悪い。
「さて、――俺も一仕事しなきゃな」
紫煙をくゆらせた瑚灯が、凄艶な顔立ちに蕩けるような笑みと蜜のような声を出す。
それだけで一斉に皆の視線が奪われた。
大声ではないのに、一瞬にして纏う雰囲気に飲まれていく。
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