犯行と遺体解体

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犯行と遺体解体

犯行は計画通りに進んだ。 愛子を殺害した後、雅彦は冷静に遺体の解体を始めた。 実家の病院から持ち出した医療器具を駆使し、彼は正確に解体作業を進めていった。 解体時の主導権は完全に雅彦が握っており、由紀子は彼の指示に従うだけだった。 雅彦は愛子の遺体の血抜きも行い、冷徹にその作業を続けた。 しかし、彼の心の中には一抹の感情が残っていた。 愛子の美しい顔と性器に対して、異常な愛情を抱きながら、彼はそれらを丁寧に切り分けた。 その行為は、彼の心に深い痕跡を残した。 それでも、初めて人間を一から解体している、この異常な状況に彼の高揚は最高潮に達していた。 普段はクールな雅彦だが、明らかに興奮していた。 初めての解体作業。 その、遺体が愛子なのだから興奮は最高潮に達していた。 ここまでの興奮は初めてだった。 医大でも、夜のベッドでも女性器など見慣れている雅彦だが、愛子のそれは特別な物に感じた。 特に性器を見た時、もっと詳しく見たい衝動にかられ、切断面から医療用の手袋を着けた手で子宮を取り出す行為をおこなった。 「これが彼女のか」と言葉にすると、ひとしきり眺めた。 だが、その高揚感が冷めると、興味がなくなり、子宮を元の遺体に詰め込んだ。 その時の彼の頭の中は彼自身も理解できていない。 何もかもが、虚無に感じ、ただ黙々と作業をこなしていた。 もはや自身で心のコントロールが出来ない状態なのだろう。 しばらく雅彦は動くことを止めていた。 微かに天井を見ていたが、その目は虚ろで、ただそこに立ち尽くしているようだった。 それに気付いた由紀子が雅彦に何度か声を掛けた。 「雅彦、雅彦、しっかりして。」 そして雅彦は由紀子の声のする方にゆっくりと顔向け、微かに微笑んだように見えた。 冷たい月光が彼の顔を照らす中、雅彦は全てが終わった後の虚無感に包まれていた。 由紀子への愛情と母性を求める心が彼を突き動かしたが、その結果は永遠に消えることのない罪と後悔をもたらした。 雅彦は、自らの手で全てを壊したことを悟り、冷たい夜の静寂の中で自らの行いを見つめ続けるのだった。
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