池上優子

1/1
前へ
/62ページ
次へ

池上優子

池上優子は深い眠りの中で、愛子の思念を感じ取った。 愛子は優子に助けを求めていた。 優子は寝床から起き上がり、窓の外に広がる福岡市の夜景を見つめた。 愛子の死を確信し、その思念が優子の心に重くのしかかっていた。 「愛子、どうして……」優子は呟いた。 優子は自宅で蝋燭を灯し、浄化の儀式を始めた。 これは神道と密教の要素を取り入れたもので、霊と繋がるための準備であった。 優子は清らかな水で手を清め、心を落ち着けるために深呼吸を繰り返した。 蝋燭の炎が揺れる中、優子は心の中で愛子に語りかけた。 優子の家系は代々巫女の家系で時折その血が色濃く現れる時が有る。 優子はまさに、巫女としての血を色濃く受け継いでいた。 「愛子、あなたの声を聞かせて。何があったのか、教えてほしい。」 その瞬間、優子の目の前に愛子の姿がぼんやりと浮かび上がった。 愛子は泣いているように見え、その背後には男と女の姿が映し出された。 彼らの冷酷な表情と共に、愛子が殺される瞬間が優子の心に直接流れ込んできた。 「女が私を殺したの。男も一緒に。」 愛子の声が直接優子の心に響いた。 その痛みと恐怖が優子を襲い、涙が自然と溢れた。 「分かった、愛子。私が必ずあなたの無念を晴らす。」 優子は愛子のメッセージを元に、翌日、元交際相手であり探偵の佐々木健児に連絡を取ることを決意した。 健児は警察を辞めてからも多くの事件を解決しており、その能力は信頼に値するものだった。 愛子はそんな優子と小学校時代からの友達で、優子の霊能力を知っていた。 小学校時代、優子の霊能力で誘拐犯を未然に察知して、難を逃れた事があった。 帰り道すがら、男の背後に複数の女児の霊を見て、危険を知らせてくれいることを察知、寸前の所で、誘拐犯のスネを蹴り、交番まで走って逃げ込んだ。 のちに顔写真から犯人を特定、警察はすぐさま任意で男を事情聴取した。 証言が曖昧で明確なアリバイが無いので、手続きをして任意から容疑者として身柄を拘束し逮捕に踏み切った。 容疑は誘拐未遂である。 その後男の自宅を捜索。 小さな部屋の中で、古びた木製の机が置かれ、そこにはいくつかのインスタントカメラが並んでいた。 警察官たちは慎重に、一台一台を調べながら、可能性のある証拠を見つけようとしていた。 そして「これは……」と1人の警察官がつぶやいた。 その手にした一枚の写真には、山林の中に捨てられたとみられる複数の遺体が映っていた。 更に複数の写真に拘束された女児の姿もあった。 警官達は色めき立ち、証拠品の押収を一丸となって行い、事件の真相解明に向けて進めていくことを決意した。 この時、池上優子は1人の刑事に複数の女児が殺されていて、その写真が必ず犯人の家に保管されている事を告げていた。 知らせを受けたその刑事は息を飲んだ。 「この子には本当に見えていたんだ」そう確証して、 優子にある質問をした。 「女の子達は今どうなっているのか教えてくれないか。」 優子は頷くと、祈るように手の指と指を絡ませ、顎を「クイッ」と上げ何処か遠くを見ていた。 しばらくして優子は刑事に言った。 「みんなありがとうと言ってるよ。」 「みんなお空に向かったよ。」 刑事にそれを確かめる術はなかったが、それを素直に信じていた。 刑事には池上優子と同い年の男の子がいたので、とても他人事とは思えない、そんな不思議な事件だった。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加