血の月夜

佐々木健児

翌日、優子は佐々木健児の事務所を訪れた。

健児は優子の来訪に驚いたが、彼女の切迫した表情を見てすぐに事態の深刻さを察した。

「優子、何があったんだ？」

「健児、愛子が……愛子が殺されたの。」

優子は愛子の思念とその映像を健児に伝えた。

健児は黙って優子の話を聞き、彼の表情が険しくなっていった。

「警察には言ったのか？」

「霊のイメージだけでは、警察は動かない。だから、あなたに相談しに来たの。」

健児はしばらく考え込み、深い溜息をついた。

「分かった。俺が調べてみる。」

優子と健児は協力して、浦田愛子の背後にある真実を暴くための調査を始めた。

優子は霊視の力を駆使し、健児は彼の探偵スキルを駆使して、二人は少しずつ手がかりを集めていった。

優子の霊視は、特に神道や密教の儀式に根ざしていた。

彼女は清らかな水と塩を使い、神棚に供物を捧げ、浄化のための祝詞を唱えた。

これらの儀式は、霊との繋がりを強化し、彼女の霊視をより正確にするためのものであった。

優子は特に、密教の護摩供養を行い、火の力で邪悪なエネルギーを払うことで、愛子の魂を安らかにすることを目指していた。

ある夜、優子は再び霊的な儀式を行っていた。

蝋燭の炎が静かに揺れる中、優子は深い瞑想に入った。

すると、背後に小さな女児の霊が現れた。

女児は優子に微笑みかけ、優子の手を取った。

優子が霊視を始めると時々この様な事が起きる。

まだ死んだ事を自覚で出来ていない霊が、優子に寄ってくる。

この子は話相手が欲しかったようだ。

優子は優しく話を聞いてあげた。

そして空を指差し女児にこう言いった「お空にお友達がたくさんいるよ。」

「そこに行きたいと思わない？」

女児は頷いた。

「うん、行きたい。」

「じゃ、空に手を伸ばしてごらん。」

「光が見えないかな？」

「見えた。」

女児は喜んで答えた。

「そこに行きたいと思ってごらん。」

女児がそれに答えて「行きたい」と願うと、女児の体がゆっくり空へと上り始めた。

「バイバイ。」と言って、優子は空に向かって手を振った。

健児にはそれを見ることは出来ないが、何かを感じてはいた。

それをなんと呼ぶかは分からないが、そこなある何かが帰るべき場所に帰ったのだろうと思う瞬間であった。