25人が本棚に入れています
本棚に追加
「うん。」
「えっと、俺が見たわけじゃないけど、男の周りに女の子が、浮いていたみたいなんだって。」
健児は目線で皆の反応を確認しながら話を続けた。
「その子達が、逃げてとか、このおじさんは怖い人、悪い人、助けてみたいなそんな声が、心か頭か胸かは詳しくは分かんないけど、その女の子には聞こえたんだって。」
「その時の人数が多分3人だったと思う。」
「親父はその時は、信じていなかったんだが、警察署に連れてこられた写真の男のアリバイはなくて、供述が曖昧だったから、確か容疑を急遽、誘拐未遂に切り替えたのが、親父の指示だったんだ。」
「その女の子には一度家に帰ってもらっていたから、次の日にもう一度、警察署に親と来てもらって、何人かの写真を見せて、話を聞いても同じ男をだと証言したので、容疑者の自宅を家宅捜索したんだっけな。」
「でね、1時間もしない内に、が入って、その男が確か3人の女の子の写真を撮っていたのが、出てきたんだって。」
「その無線連絡が入る前に女の子から、男の家に女の子の写真があるから見つけてあげて」って言われてたらしいんだ。
「そしたらそんな連絡が来たもんだから、さすがに親父もびっくりしたみたいで、幽霊なんか信じない親父が、その子に聞いたんだって。」
「何を聞いたの?」
女子の1人が健児に訪ねた。
「えっと、確か、今その子達はどうしてる」だったかな。
「それで、なんて答えたの?」
「皆、ありがとうと言ってて、空に登っていたって女の子が言ったんだ。」
「それマジもんの幽霊じゃないの?」
「マジで怖いんですけど。」
女子たちが怖がり始めた時、健児の言葉がトドメを刺す事になった。
「ほら、俺等が小学生の時に福岡連続女児誘拐事件ってあっただろう。」
「あれがそれだよ。」
女子達は今度は言葉を失って、もっと人気の多いい、明るい場所に移動し始めた。
小学生時代の話だが、親から聞かされていたし、学校でも知らない人について行ってはいけないと、あの事件後に、散々言われたものだった。
それも福岡市で起こった事件なので、僕たち市外の人間でも怖かった記憶があった。
皆が明るい方に移動する中、健児を見て笑っているような、それでいて泣いている様な、薄明かりでハッキリと見えた訳では無いが、そんな表情の女子が健児を見ていた。
それが池上優子だった。
最初のコメントを投稿しよう!