調査

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優子は車を降りると昭和通りの交差点を渡っていた。 ここの信号は音の出る信号で、とうりゃんせが流れていた。 車も人通りも多いいこの場所で愛子は働いていたのである。 昭和ビルの前に着くと、見上げた二階に美容院があった。 エレベーターに乗り2階ボタンを押す優子。 聞き込みは初めてでは無いが少し緊張していた。 美容院の前で呼吸を整え中に入るとそれに気がついた店員が優子に声をかけた。 「いらっしゃいませ。」 その声で何人かの人間が振り返った。 「あら、えっと、前にもいらっしゃった?」 一人の美容師が声をかけてきた。 「だいぶん前に一度ですが、浦田愛子の友達です」と優子は答えた。 「あららまぁ、愛子さんの、あそう」と美容師はその間に記憶を辿っていた。 「そう言えばそうだったかしら。」 なんとも頼りない返答ではあったが、ようやく思い出したようだ。 「そうそう、5年位前ね。」 「愛子ちゃんが、旅行に行く前だったかしら。」 それに対して優子は「はい、そうです」と答えた。 「じぁもしかして、愛子ちゃんに会いに?」とその美容師は優子に訪ねたた。 年は一回りほど上の女性美容師見えた。 ただその美容師はちょっと困った表情をしていた。 「あぁはい、愛子と今日約束があったんですけど、連絡が取れなかったから、記憶を頼りに、久しぶりに天神まで出てきました。」 優子は無難な回答を美容師に返した。 すると「あら、あなたも連絡取れないのね」と困り顔を見せた。 「愛子、今日はお店お休みなんですか?」と優子が尋ねると手でちょっとまってと合図を送り、「お客様、シャンプーお願いします」と他の美容師に声をかけ、優子の元に近づいて来た。 「今日はここの店の出勤日だけど、もしかして他の店舗に行ったかもと思って電話したんだけど、やっぱり来ていないのよ。」 「そんな事、今まで一度もない子だから、自宅で寝込んでるんじゃないかと心配していたの」と彼女は困った様子で話した。 事情を察した優子は、「じぁ念の為、私が愛子の自宅に行ってみます」と美容師に告げ、バックから写真と年賀状をその美容師に見せた。 「住所はここであっていますか?」と美容師に尋ねると、年賀状と写真を見ているので、何の疑いもなく社員名簿を調べてくれた。 「うん、間違いないわ」と美容師が答えたので、緊急連絡先もいいですかと言葉を添えた。 それを聞いて、「えっと、電話番号は分かるわ。」 「実家みたいね。」 「もしかして行くの?」と聞かれた優子は「念の為です。」 「親友ですから」と笑顔で答えた。 「そう、親友なら行くわよね」と一人で納得した彼女は、愛子に連絡する様に優子に託けた。 愛子の病状次第では、店のシフトを組み直す必要があったからだ。 「はい、分かりました。」 「では、失礼します。」と頭を下げ、一階で待つ健児と合流した。 「どうだった」と健児が尋ねると、優子は「やっぱり来てないし、連絡も取れてないそうよ」と答えた。 「じゃちょっと歩くが自宅に向かうか」と健児が言うと二人は歩き始めた。
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