調査

3/3
前へ
/62ページ
次へ
この頃の福岡都心部の渋滞は慢性化していて、ある区間なら歩いたほうが早いくらいに渋滞していた。 また駐車場の確保も難しかったので徒歩で移動した。 昭和通りに出て、もと来た交差点側に天神地下街出入り口がある。 いつからそこのあるかは、二人共知りはしないが、その階段を地下に降りて行った。 浦田愛子の自宅は同じ中央区の今泉にあった。 バブル期、今泉はワンルームでも、相当な高値で賃貸されていたが、最近は値下がり傾向にあるらしいが、それでも今泉の家賃は他と比べると高い。 その代わり、地下鉄もバスも徒歩圏内なのは独身OLにとっては魅力的でもあるし、大名、西通り、親不孝、中洲など夜の遊び場もここから近い。 タクシーを使っても千円は超えない所だった。 地下街を通らず、店からほぼ直線コースでも通えなくないが、夜道などの危険性を考えればこの地下街を使っていた可能性は高いと健児は考えていた。 「ところで最後の出勤日はいつだった?」と健児は愛子に確認した。 「大丈夫、店を出る前に確認してるわ。」 優子は店を出る直前に「ところで、愛子は昨日来てましたか?」と訪ねていた。 それによると「昨日は来ていたわよ」と美容師が答えている。 あそこの美容室が20時閉店だったから、遅くとも22時頃には出ていただろうと健児は見立てていた。 優子が帰宅時間を聞かなかったのは、あまり聞き込み過ぎると、警戒心を持たれてしまうので、あえて触れなかったのである。 それに、帰宅時間の証言がズレていても調査に影響が出る。 ここはいつも通り、一度引いて再度確認する手段をとることにしたのだ。 それに殺害されていたと仮定すると、全ての人物がまずは対象になる。 「見た目で判断は出来ない。」 これは、健児がよく口にしていた言葉である。 2度、3度と会ってそして話して、そこに矛盾が出るかも知れない。 自分達には、捜査権も逮捕権もない事を十分理解しているからこそ、警戒されたくないのだ。 「愛子さんの帰宅時間は、周りから聴き込んでもいいが、とりあえず今は、安否確認が優先だ」と、いかにも健児らしい言葉が優子に投げかけられた。 天神地下街は男性より女性をターゲットにした店舗がずらりと並んでいる。 もしかしたら、この地下街の店に訪れている可能性もある。 健児の目は天神地下街出口である、国道202号線、通称国体道路交差点を目指しながら、女性の店にも視線を送っていた。 20代が通いそうな店の目星を、客層から判断していた。 「ここを出たら、もうすぐ今泉だ。」 「昼間なので、どれくらい情報が取れるかは分からないが、不在の場合、次は実家に行こ。」 健児がそう話す頃、国体道路に出る階段が見えてきた。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加