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3月2日
長い一日が終わり、日付が変わり、健児はタクシーで自宅に戻ることにした。
この時間の天神地下駐車場は既に閉められていて、駐車から車を出すことは不可能だった。
タクシーの中で、健児の頭には優子の状態がちらついていた。
しかし、池上家に任せるのが最善だと判断した。
霊能者である優子の力を借りて六条雅彦という得体の知れない存在を突き止めたが、健児の心には一抹の不安が残っていた。
「優子の様態が気にならない訳じゃない。でも、俺が居たところで何もできない」と健児は自分に言い聞かせた。
今自分がやれることは、六条雅彦を捜査対象に導くことだった。
タクシーの窓から流れる街の灯りを見つめながら、健児は鈴木茂雄にどのようにこの不気味な存在を伝えるべきか悩んでいた。
誘拐から殺人事件へと捜査の方針を変えさせるためには、何か決定的な証拠を示さなければならない。
六条雅彦と浦田愛子の関係性を情報として伝える必要があった。
「幸いなことに、美容室の店長がその情報を握っている」と優子が言っていた。
任意の取り調べで、ある程度の話は出てくるだろう。
しかし、この段階の健児にはもう一人の女性の存在が分からなかった。
タクシーの中で、健児は推理力、分析力、そして直感力を駆使し、頭の中で事件を整理しようとしていた。
六条雅彦の背後に潜む闇、そしてまだ正体を掴みきれていない謎の女性。
これらのピースをどう組み合わせれば鈴木茂雄に伝わるのか、健児の心は緊張と不安で張り詰めていた。
タクシーが揺れる度に、健児の心も揺れ動く。
彼は深く息を吸い込み、目を閉じた。
タクシーの中で、健児の頭は複雑な思考に包まれていた。
六条雅彦の背後に潜む謎の女性、その存在が事件にどう関与しているのか、健児は直感的に感じ取っていた。
「何かが、何かが引っかかるんだ」と健児は心の中で呟いた。
優子の霊能力に頼ることも出来なくはないが、今回のことで優子に無理をさせたくなかった。
彼の直感は、謎の女性が事件の核心に何らかの形で関与していると告げていた。
「女がただの傍観者であるはずがない」と健児は思った。
六条雅彦の背後にいるこの女性が、事件の全貌を解き明かす鍵を握っている可能性が高い。
だが、その正体を掴むにはまだ多くの情報が欠けている。
彼女がどのような目的で、どのように事件に関与しているのかを突き止める必要があった。
健児の胸には不安と疑念が渦巻いていたが、それ以上に強い探究心と使命感があった。
この女性の存在が事件の真相に迫る手がかりであると確信していたからだ。
「彼女が何者なのか・・・」健児はタクシーの窓越しに夜の街を見つめながら、次の一手を考えていた。
彼の心は緊張で張り詰めていたが、その瞳には鋭い光が宿っていた。
「絶対に見逃さない」と健児は自分に誓った。
彼はこの謎の女性の正体を突き止め、事件の真相を明らかにするために全力を尽くすつもりだ。
タクシーが目的地に近づくに連れ、健児の心には新たな決意が芽生えていた。
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