無価値な落書きと揶揄される引っ込み思案な令嬢が好きな人のために自分を変える話

6/7
前へ
/7ページ
次へ
 ミリーとリックの関係は日々深まっていき、やがてミリーは自分の気持ちを伝える勇気を持つようになった。  鏡の前で何度もシュミレーションして、振られたらそのときは潔く諦めて枕を濡らそうと決めた。  ある夕暮れ時、ミリーはリックに思い切って告白した。 「リック様。私はあなたのことが好きです。ずっと前から、あなたの明るさや優しさに惹かれていました。あなたのように、なりたかった」  リックは微笑みながら答えた。 「ミリー殿、俺も君のことが好きだよ。君さえ良ければ婚約して、結婚してほしい」 「ほ、本当に、良いんですか? 落書きと呼ばれていた、私で」  空想は告白するところで終わり、どんな返事をもらうかは怖くて想像できなかった。  君ではだめだと言われる覚悟のほうが大きかった。  いい返事をもらえたのに、涙目でうろたえるミリー。  リックはミリーの手を両手で包んで笑う。 「君の生来の優しさや、変わろうと努力する姿が好きなんだ。君は壁の落書きなんかじゃない」  二人はお互いの気持ちを確かめ合い、幸せな時間を過ごした。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加